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一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会
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腸内細菌が喜ぶ食べ方[第3回総会パネルディスカッション]

2019年9月23日、一般財団法人腸内フローラ移植臨床研究会の第3回総会「腸内細菌から人類への手紙」が開催されました。

今回は、「腸内細菌が喜ぶ食べ方」をテーマとしたパネルディスカッションの内容をお届けします。

全体の開催報告はこちらのリンクよりご覧ください。

パネルディスカッション

登壇者紹介(順不同・敬称略)

  • 國澤 純(くにさわ じゅん)
    国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長
  • 清水 真(しみず しん)
    シンバイオシス研究所 上席研究員
  • 川井 勇一(かわい ゆういち)
    医療法人悠亜会 かわい内科クリニック院長
  • 城谷 昌彦(しろたに まさひこ)
    ルークス芦屋クリニック院長
  • 喜多村 邦弘(きたむら くにひろ)
    医療法人喜和会 喜多村クリニック院長
  • 萬 憲彰(よろず けんしょう)
    医療法人医新会 よろずクリニック院長
  • 井上 正康(いのうえ まさやす)
    大阪市立大学名誉教授
    FMTクリニック院長
  • 清水 幸子(しみず さちこ)
    管理栄養士

【進行】
田中 善(たなか よしむ)
医療法人仁善会 田中クリニック院長

腸内細菌が喜ぶ食べ方

「腸内細菌が喜ぶ食べ方」というのは、みなさんが非常に関心のあるテーマだと思います。
それでは、薬膳にも精通されている管理栄養士の清水幸子さん、いかがでしょう。

清水 幸子
今日のこれまでのお話、主にドクター側の視点、つまり体の内側から症状を捉えるお話でした。

一方で私たち栄養士は、外側である口から何を食べるかにフォーカスします。
それがその人の体質を改善していく方向に働くのか、それとも崩してしまう方向に働くのかを探りながら、その人それぞれの食べ方を指導します。

みなさんに人相があり顔が違うように、腸にも腸相があります。

自分の体に合っているかどうかは、自分の体から出てくる答えを見極める力が大事です。
そのすべを知ってもらいたいなと思っています。

清水さんは人を見るだけでその人なりのいい食べ方が推測できるんだろうなと思います。
川井先生、いかがでしょう。
患者さんにどういう指導をされていますか。

川井 勇一
よく噛んでください、というのは基本としてお伝えしています。

噛むことによって唾液が出ます。
それを口腔内細菌と一緒に飲み込むと、胃や腸を通過する過程で何かしらの影響があるはずです。

口腔内細菌がどの程度、腸内細菌に影響しているかはまだ明らかではないですが、影響を及ぼしていることは間違いなさそうです。

胃酸を抑える薬を飲んでいる人は、腸内細菌に口腔内細菌がかなり混じっているという報告もあります。

よく噛んで食べることには、消化吸収をよくする以上に、口腔内細菌の問題もかかわっているのではないでしょうか。

ありがとうございます。
口腔内細菌には私も非常に興味を持っていまして、医科歯科連携も進めているところです。
國澤先生、そのあたりいかがでしょう。

國澤 純
私自身も、唾液と便はセットであると思っています。

口の中には好気性の菌が多く大腸の中には嫌気性の菌が多いので、菌叢は違うのですが、毎日唾液を飲んでいるので、口腔内細菌と腸内細菌は連携しているように感じます。

将来的に、唾液を見れば腸内細菌がわかるようになるのではないかという観点で、研究を進めています。

では城谷先生、ご自身がご病気になった経験をお持ちですが、病気になる前後で食事は変わったと感じますか?

城谷 昌彦
上京して一人暮らしをしていたとき、決して食事に気を遣っているとは言えない生活をしていました。

個人的には、何を食べるかということに加えて「誰と食べるか」「どれくらい時間をかけて食べるか」ということも重要であると思います。

最近は腸ばかりが注目されるようになりましたが、やはり胃酸は大事です。
患者さんでも、なかなか改善しない人はあまり胃酸が出ていない人が多い。

現代人は忙しいので、短時間で昼食をかきこむようなことをしてしまいます。
そうなると交感神経優位のまま食事をすることになるので、腸内細菌にとっても喜べる食べ方になっていないのではないでしょうか。

ゆっくりと時間をかけて食べる食べ方を大切にしています。

最近では、どんな薬でもセットのようにPPI(胃酸抑制剤)を処方するようになっていますね。
それが腸内細菌に大きな影響を与えているんでしょうか。
國澤先生、どうでしょう。

國澤 純
私は胃酸には詳しくありませんが、ピロリ菌を除去すべきかという問題には注目しています。

どうも腸内細菌にはかなり影響があるようで、胃がんのリスクは下がったかもしれないけれど、除菌後に体調が変わったという話も聞きます。

また、胆汁酸も腸内細菌に影響を与えます。
そういった全体のことも含めて考える必要があるでしょう。

がんになったときの食事

それでは質問を変えまして、がんの患者さんにどういう食事をしたらいいかの指導について聞かせてください。
萬先生、末期のがん患者さんもたくさん診ておられるとおもいますが、免疫と腸の関係も含めてどう思われますか。

萬 憲彰
患者さんの中で、90歳を過ぎても本当に元気なおじいちゃん、おばあちゃんがいらっしゃいます。

話を聞くと、土を触っている人が多いことに気がつきました。
畑仕事という適度な運動も関わっているとは思いますが、それ以上に「土壌」に含まれる成分や菌の恩恵が大きいのではないでしょうか。

土を触り、自然本来のものを体に取り入れ、なるべく地産地消をする人が元気です。

先日不思議な症例に出会いました。
その人は膵臓がんが再発したにも関わらず、二年も元気に過ごされています。
よくよく聞いてみると、自分でミツバチを育てているということでした。
これが免疫力を上げているのは間違いないでしょう。

やはり食事がいい人は元気ですね。これからも多くの症例を見ていきたいです。

同じく、がん患者さんを多く見られている喜多村先生はいかがでしょう。

喜多村 邦弘
がんの治療を受けていらっしゃる方は、ストレスが多いので胃酸抑制剤を出されている方が多いですね。
それに加えて、抗がん剤治療の影響で下痢をしておられる。

みなさんタンパク質の値が低くなってしまうんですが、これをどう回復させたらいいのか、非常に悩みます。
ただ食べるだけでは、消化吸収の機能が働いていないので、数値もあがりません。

消化酵素、アミノ酸を摂取してもらっても、難しい。
腸の機能の修復、腸内細菌の回復というところに発想は行くんですが、実際問題として難題です。

生化学的に見た腸内細菌が喜ぶ食べ方

井上先生、生化学的に見て腸内細菌が喜ぶ食べ方というのはどういったものでしょうか。

井上 正康
まず、このテーマそのものに疑問があります。
腸内細菌によって喜ぶものが違うので、どの腸内細菌にとって喜ぶ食べ方なのかがわかりません。

そして食べ方には3つの次元があります。
まず食材。
そして調理。ここで発酵などが加わるといいですね。
最後に食べ順などの食べ方です。

我々が食べたものを腸内細菌が利用し、その代謝産物が次の腸内細菌の餌になるというような連鎖があります。

また、我々の直感も大切です。
うまいもの、まずいもの、それぞれに意味があります。

胃酸の問題に関しては、今やいたちごっこになっています。企業主導で除菌が大流行していますが、何十年後かに「とんでもないことをやった」ということになるかもしれません。

牛には胃が4つあります。
彼らから学べることはたくさんあります。牛たちは草を食べているだけで、脂肪やタンパク質を得ることができているのですから。

清水研究員、いつも海洋性の食べ物から食べるといいと言っておられますがいかがでしょう。

清水 真
腸内細菌のためになるかどうかはともかく、「出されたものは何でも残さずいただきなさい」と教えられて育ちました。
なので僕には好き嫌いがありません。

あえて言うならば、朝食でも夕食でも、一日のうちでメインとなる食事の際に、海洋性の食べ物をひとくち目に召し上がってくださいとお伝えしています。

その理由は、我々が海から陸に上がって進化してきた過程を再現するためです。
代謝の順番も、そのようになっているはずなので、まずはお魚やひじきなどの海藻を召し上がるといいかと思います。

会場からの質問タイム

会場のみなさんから挙手制で質問をしていただきました。

最近話題の糖質制限

質問者
最近、糖質制限が話題になっています。
実際に体調がよくなった方もおられます。腸内細菌にはいいのでしょうか?

井上 正康
答えはYesアンドNoです。
例えば銀シャリは1貫で角砂糖17個に相当すると言われます。
砂糖はそんなに食べられませんが、銀シャリはいくつでも食べられてしまう。

日本人はケトジェニックな代謝とは違う食事をしていると言えます。
和食がヘルシーな食事として世界遺産に登録されましたが、我々は縄文時代の食事をベースにするといいでしょう。

どんぐりや栗などをよく噛んで食べ、食物繊維をしっかり摂っていました。

白米を食べるようになってから、江戸患い、いわゆる脚気が流行り出した。
ここで、日本食はほんとうにヘルシーなのかをもう一度考える必要があります。
ケトジェニックの考え方は、そのいいきっかけになるでしょう。
糖質制限は、やり方次第では西洋人より日本人に合っているかもしれません。

一方で、甘いものを美味しいと感じる仕組みも持っています。
その感覚的なメカニズムははっきりとわかっていません。
そのようなことも含めて糖質制限を語るべきでしょう。

確かに糖質制限は大ブームですが、國澤先生、いかがでしょう。

パネルディスカッション

國澤 純
米は胚芽の部分にもビタミンなどの栄養が詰まっており大事です。
腸内細菌にもビタミンをつくる菌と消費するだけの菌がいます。
人によっては、ビタミンをつくらない菌しかいない可能性もあります。
その場合はやはり、玄米など食事からビタミンを補う必要があるでしょう。

腸内細菌は食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸を産生します。
それが腸のエネルギーになり、腸も私たちも喜ぶことになります。

また、食物繊維には血糖値を上げにくい効果もあります。

白米は美味しいので適度に楽しみ、糖質制限でも糖質を完全に止めるのではなく、量を減らすなどの工夫があるといいですね。

質問者
ケトジェニックな体質にすると、アトピーが改善しています。
今は糖質制限よりも糖質選択かなと思いますが、体調は確かによくなります。
ケトジェニックな状態は腸内細菌にいいのでしょうか?

井上 正康
米を白米の状態で食べるのは、生物学的には異常です。
人間にとって、究極の食事は共食いです。
けれどそれはできない。

ケトン体に関しては、飢餓との戦い、それから糖尿病。この2つのキーワードでしか今は語ることができません。
腸内細菌のことはこれからわかっていくでしょう。

國澤 純
今注目されているのは中鎖脂肪酸です。

認知症などで脳内のグルコースの利用が上手く出来なくなっている状態でも、ケトン体は脳のエネルギーとして使用できる可能性が言われています。
腸内細菌の餌も糖ですので、菌の糖代謝にケトン体が利用できるのかは今非常に注目されています。

人工甘味料と腸内細菌、サプリメントの効果差

質問者
食品添加物(人工甘味料など)の摂取と腸内細菌の関係はどうでしょう?
また、機能性食品やサプリメントの摂取前に腸内細菌を調べることで何かわかるのでしょうか?

國澤 純
人工甘味料については、何年か前のNatureで腸内細菌に悪影響を与えるという報告がありました。
菌のエネルギーが糖なので、うなずけます。

またサプリメントについて、たとえば大豆イソフラボンから腸内細菌の働きで作られるエクオールなどでは、エクオール産生菌を持っているかを調べるキットも開発されています。

機能性食品に関しても、個人差が非常に大きい場合があるようです。
その原因に、腸内細菌があるのではないかと考えています。

ホールフードや生食

質問者
プラントベースやホールフード、植物性のものをいただくことについて、また加熱食品の腸内細菌への影響はどうでしょう。

井上 正康
野菜は茹でるとたくさん食べられますね。
生だとちょっとしか食べられない。
例えばお年寄りには茹でたもののほうがいいかもしれません。
どちらがいいかではなく、その人によって変えるのがいいでしょう。

処方薬と人工甘味料

質問者
質問というより、お願いです。
今、OD錠にアスパルテームなどの人工甘味料がたくさん使われています。

小児科でも、赤ちゃんの飲む薬にスクラロース、サッカリンなどを平気で使っている。
腸内細菌にとって悪影響を及ぼすのは明らかです。
発がん性もあるし、認知症も引き起こすでしょう。

処方にあたる先生方、ぜひ注意をお願いします。

あっという間に一時間が経ってしまいました。
会場からの質問も多くあり、大変白熱した場となりました。
ありがとうございました。

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