腸内フローラ移植(便移植)を受けられる、国内唯一の学術的研究会です。臨床医と臨床検査技師が届ける世界最高水準の安全と効果を目指して。
一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会

第5回学術大会【開催報告】

2021年9月19(日)に開催された「第5回学術大会」は、新型コロナウイルス感染症の予防及び拡大防止の観点から、今年も会場の規模を縮小し、オンサイトとオンラインで開催されました。

医療関係者や一般企業の方、研究機関の方、患者様にもご参加いただき、皆様に腸内フローラ移植の可能性を知っていただくための、とても有意義な1日となりました。ご参加くださいました皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。

会場では、感染拡大防止にご協力をいただきましたこと、合わせて御礼申し上げます。

オープニング

開会の辞

はじめに、大会長である代表理事の田中 善 先生からご挨拶がありました。

昨今の困難な状況にもかかわらず、皆様のご支援、ご協力により、無事開催できたことの御礼と、設立からの5年を振り返って日頃の臨床応用における謝辞を述べられました。


午前中は、3人の先生より発表いたしました。

午前中の座長である、理事の萬 憲彰 先生(医療法人医新会よろずクリニック 理事長)による田中 善 先生のご紹介からスタートです。

医療法人医新会よろずクリニック 理事長 萬 憲彰 先生

►医療法人仁善会 田中クリニック 理事長 田中 善 先生

お一人目は、医療法人仁善会 田中クリニック 理事長 田中 善 先生でした。

腸内フローラと免疫との重要な関係から、腸内フローラ移植(FMT)ががんの発症、進行抑制に働く可能性があること、また腸腎連関の観点から、積極的治療法のない透析導入前の保存期腎不全において、FMTにより腎機能低下を抑制できる可能性があること、についてお話いただきました。

腸内フローラ移植臨床研究会における今後の臨床研究についてーがん、腎疾患
代表理事 田中 善
医療法人仁善会田中クリニック 理事長

当研究会は現在まで腸内フローラ移植(FMT)の臨床的な研究により、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などの消化器疾患のみならず、子供の自閉スペクトラム症や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患などにおいて成果を上げてきています。
今後は、がんや腎疾患に対する臨床的な研究も進めていきたいと思っています。腸内フローラと免疫との重要な関係から、FMTががんの発症、進行抑制に働く可能性があること。また腸腎連関の観点から、積極的治療法のない透析導入前の保存期腎不全において、FMTにより腎機能低下を抑制できる可能性があること。これらの点について問題提起をしたいと思います。

症例報告

ナチュラルアートクリニック 院長 御川安仁 先生

潰瘍性大腸炎寛解への道のり
御川安仁 先生
ナチュラルアートクリニック 院長

ナチュラルアートクリニック 御川安仁先生糞便微生物移植(FMT)は腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ(dysbiosis)を改善させる方法として近年注目されている。腸内フローラ移植臨床研究会では微細な水素分子を溶存させたナノバブル水を用いてFMTを行っているが(NanoGAS®-FMT)、ナノバブルの持つ様々な特性により従来のFMTに比して効果が高いと考えられている。
今回我々は、NanoGAS®-FMT開始後3か月で、主治医による内視鏡所見にて寛解と認められた潰瘍性大腸炎の1症例を経験した。当院受診前、投薬開始後炎症は低下傾向になったものの、症状は十分に安定せず上下動があり、腹痛、下痢、血便が時折見られた。食事やストレスにて悪化した経緯があり、ご自身で食事や生活のコントロールをされかなり安定化するも寛解には至らなかった。今回移植効率を上げるため、移植前に腸内環境改善・栄養状態改善を行った。
我々が経験した症例を治療経過、検査データなどの推移について報告した。

続いて、東京・四谷で開業されている御川安仁 先生の症例報告です。

NanoGAS®-FMT開始後3か月で、主治医による内視鏡所見にて寛解と認められた潰瘍性大腸炎の1症例について、オンラインで発表いたしました。

►ライフクリニック蓼科 院長 麻植ホルム正之 先生

潰瘍性大腸炎に対する腸内フローラ移植(NanoGAS®-FMT)の有用性
麻植ホルム正之 先生
ライフクリニック蓼科 院長

ライフクリニック蓼科 麻植ホルム正之先生潰瘍性大腸炎(UC)は日本を含め世界中で患者数が増加している疾患の一つである。その多くは再燃を繰り返し、慢性的症状を抱え持続的な治療が必要な疾患である。UCに対する腸内フローラ便移植(FMT)は今のところ一般的ではないが、腸内フローラを変化させることで緩解治癒が期待される治療法である。
今回我々は従来の生理食塩水と便菌液を混じた腸内フローラ便移植(FMT)ではなく、NanoGAS🄬と便菌液を混じ、付加価値を付けた特許出願中のNanoGAS🄬-FMTを施行したUC2例と慢性副鼻腔炎を合併した認知症 1例を経験した。症例は身体的症状、精神的症状、腸内フローラバランスの改善を認めたので報告した。

続いて「人を地域を医療からハッピーに。」をモットーに、蓼科の自然あふれる茅野市で開院された麻植ホルム正之先生が、潰瘍性大腸炎2例と慢性副鼻腔炎を合併した認知症 1例の症例報告を発表いたしました。

昼食<協賛企業紹介>

お昼休憩時に、協賛企業の発表がありました。
協賛にご協力くださいました皆様、本当にありがとうございました。

ハートスフードクリエーツ株式会社
KIN・TOSS
一般社団法人Love I Food Education
株式会社SOPHIA
株式会社リタニアルバイオサイエンス
大髙酵素株式会社 様(オンライン参加)


午後は、基調講演からスタートしました。

基調講演

大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 副研究科長
分子生物遺伝学研究領域 教授 片山泰一 教授

自閉スペクトラム症の客観的検査法の有用性
~新しい注視点検出装置・ゲイズファインダーの開発経緯~
片山泰一博士
大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 副研究科長
分子生物遺伝学研究領域 教授

近年、「自閉スペクトラム症」に関する様々な問題が社会で大きく取り上げられるようになりました。しかし、「自閉スペクトラム症」に関する正しい知識・理解は、まだまだ進んでいないのが現状です。その原因の一つに、自閉スペクトラム症の方の感じ方、考え方を他者が理解する手段に乏しく、外から見て分かりにくいことが問題でした。そこで、誰でもわかる簡便で客観的な可視化ツールとしてGazefinder(GF)が開発されました。本講演では、GF開発に関わった一人として、その開発経緯を通して、自閉スペクトラム症という障害・病態の捉え方、課題、その科学的解決方法などをなるべく分かりやすく概説し、それらを出席者の皆様方と共有することを目的とした包括的なお話しになることお許しください。ひいては、自己と他者の違いをお互いが「共通の物差し」を持つことで了解可能になることの重要性を知っていただきたいと考えています。

現在当研究会では、自閉スペクトラム症におけるFMTが及ぼす消化管症状と腸内細菌叢の変化についての取り組みを行っております。医師の所見や腸内フローラバランスの変化に加えて、保護者の方にご協力いただき各種チェックシートや日々の変化をオンラインで記入いただいています。

今までは、移植によってどのような変化があるかは、ご本人ではなくご家族や療育者の観察によるものがほとんどでした。さらに片山泰一 教授は、自閉スペクトラム症の方の感じ方、考え方を他者が理解する手段に乏しく、外から見て分かりにくいことが問題だと考えておられました。

そこで、誰でもわかる簡便で客観的な可視化ツールとして「注視点検出装置・ゲイズファインダー」の開発に関わられ、現在大阪府下を中心に一部の市町村の一歳半健診に導入されています。

片山泰一教授らが開発した「注視点検出装置・ゲイズファインダー」の開発経緯と、自閉スペクトラム症の特徴の捉え方、今後の課題についてお話いただきました。

ASD症例集計

►シンバイオシス研究所 井戸本敏希

当研究会の症例からみる「自閉スペクトラム症」における腸内フローラ移植(FMT)の有用性について
井戸本敏希
シンバイオシス研究所

シンバイオシス研究所 井戸本敏希様々な疾患と腸内細菌叢との関連が次々と明らかになっているが、近年では消化器系の疾患だけでなく、腸内細菌叢が自閉スペクトラム症(ASD)とも関連しているのではないかと言われ、注目されている。
我々は、ASDと診断された7名(男性6名、女性1名)を対象に腸内フローラ移植(FMT)を行った。質問紙法の心理検査であるABC-J、SRS-2を用い、FMTの前後での臨床的な行動について評価した。ABC-Jは、「異常行動チェックリスト」と呼ばれ、ASDにおける行動上の問題を得点化し評価するもので、SRS-2は、「対人応答性尺度」と呼ばれ、ASDの診断ツールのひとつとしても用いられている心理検査である。
さらに、被験者の視線を追うことで定型発達の子どもとASD傾向の子どもを客観的に見分けることができる視線計測装置「Gazefinder」を用い、FMTの前後で、対象者のものの見かたに変化があるかを調べた。
これらの心理検査や測定から得られたデータを集計したところ、FMTがASDの困りごとを改善するための選択肢となる可能性が見いだされた。今回集計したデータのまとめと、それから得られる考察を報告する。

シンバイオシス研究所から、ASDと診断されたお子様で腸内フローラ移植をした7名に対してゲイズファインダーの計測をしたデータのまとめと、それから得られる考察を報告いたしました。

ASDの人は、定型発達の人に比べ、人物の目の領域を見る時間が短い(人と目線が合いにくい)ことを示す研究があります。このゲイズファインダーでは、画面上に人物の写真と幾何学模様とを同時に左右に並べ、どのように画面を見ているかを測ります。

ASDと腸内細菌の研究はまだまだ始まったばかりですが、子供さんの行動や腸内フローラバランスの変化、そしてこのゲイズファインダーでの客観的な計測を通して、新たな発見があったことをお伝えいたしました。

ASD症例報告

►専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)

自閉スペクトラム症児治療における腸内フローラ移植(FMT)の可能性
専務理事 城谷昌彦 先生
ルークス芦屋クリニック 院長

ルークス芦屋クリニック 城谷昌彦先生近年、腸内細菌のメタゲノム解析技術が飛躍的に向上したことを背景として腸内細菌叢と様々な疾患リスクとの関連が明らかになっている。本邦における自閉スペクトラム症(以下ASD)児の有病率は年々増加傾向にあると言われているが、ASD児における腸内細菌叢において特定の菌種・構成パターンの違いや多様性の乱れ(dysbiosis)があることが知られるようになってきた。
我々はASD児を対象に腸内フローラ移植(以下FMT)を行い、FMTの前後での腸内フローラの変化に加え、行動の変化を評価するためにABC-J、SRS-2、消化器症状の変化を評価するためにGSRS(Gastrointestinal Symptom Rating Scale)を使ったほか、ASDに多いとされる視線の合いにくさや他者への関心の低さを評価するために、注視点分布計測装置(Gazefinder) を用いて注視ターゲットの変化を評価した。さらに心理臨床の観点からFMT前後での描画テストにおける変化についても考察を行った。
まだ症例は少ないものの、当研究会が経験した症例の中には、FMTが自閉症に関連した症状改善に効果が示唆される例もあり、FMTがASD児ケアにおける選択肢となる可能性が示唆された。今回我々が経験した症例を心理臨床的考察も含めて報告する。

ルークス芦屋クリニック 院長 城谷昌彦 先生からは、自閉スペクトラム症(ASD)児を対象に行った腸内フローラ移植(FMT)の症例について報告いたしました。

ルークス芦屋クリニックでは、FMTの前後での腸内フローラの変化に加え、描画テストにおける心理面の変化にも着目し、今回、城谷昌彦先生の発表の後に臨床心理士からも興味深い報告がありました。

動画はこちらからご覧ください。

パネルディスカッション

座長 代表理事 田中 善 先生(医療法人仁善会 理事会 田中クリニック 院長)

大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 副研究科長・分子生物遺伝学研究領域 教授 片山泰一 教授
専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)
理事 喜多村邦弘 先生(喜多村クリニック 院長)<オンライン参加>
シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真
シンバイオシス研究所 井戸本敏希

実際に移植を受けられているASDの患者さんのフローラバランスのグラフや、チェックシートやゲイズファインダーの結果を見ながら、片山泰一 博士や担当の先生に解説してもらいました。福岡県からも、医療法人喜和会 喜多村クリニック 院長 喜多村邦弘先生もオンラインで参加されました。

さらに皆様からオンラインでお寄せいただいたASDに関する質問に、片山泰一 博士を交え、先生方が回答させていただきました。


基礎研究報告

►シンバイオシス研究所 森下理咲子

医療分野におけるウルトラファインバブルNanoGAS🄬の活用法の探索と実用化研究
森下理咲子
シンバイオシス研究所

腸内フローラ移植(FMT)に活用されているNanoGAS®︎は、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎などの腸疾患だけでなく、アトピーやアレルギーなどの皮膚疾患や鬱や自閉症などの精神疾患など、幅広い疾患に対して優れた治療実績を挙げています。
2020年にはNanoGAS®︎-FMTの糖尿病疾患に対する有効性に関する学術論文も出され、科学的検証が進んでいます。微細バブルの中でも、特殊な物性を有するNanobubbleは、健康科学全般に多大な貢献をもたらす、さらなるポテンシャルがあると期待されています。
そこで弊社は、NanoGAS®︎の医療・創薬・食品分野における利活用を目指して2020年から様々な基礎臨床研究を開始し、新規素材としての有用性を評価しています。
今回、医薬、創薬、食品分野における3つの研究テーマに関して新知見が得られたため、本学術大会にて報告いたします。

►シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真

シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真より、当研究会の腸内フローラ移植の新しいチャレンジについてお話いたしました。

閉会の辞

►専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)

最後に、城谷昌彦先生から、日頃の感謝と来年の第6回学術大会のご案内をさせていただき、閉会いたしました。

第6回 学術大会につきまして

第6回学術大会の開催が下記の通り決まりました。第6回も腸内フローラ移植の基礎研究報告・症例報告など、皆様方に日頃の研究の成果をご報告いたしますので、皆様のご来場をお待ちしております。
詳細が決まりましたら随時、第6回学術大会イベントページでご案内をさせていただきます。

[日程] 2022年10月18日(日)
[場所] リーガロイヤルホテル大阪


最後に

このようなコロナ禍で、無事に開できましたのは、これもひとえに、皆様のご支援とご協力のお蔭と感謝しております。本当にありがとうございました。

腸内フローラ移植の可能性が、今まさに注目されているのだということを改めて実感し、今後の研究においても、少しでも皆様のお力になれるよう日々研究を重ねてまいります。

引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。