腸内フローラ移植(便移植)を受けられる、国内唯一の学術的研究会です。臨床医と臨床検査技師が届ける世界最高水準の安全と効果を目指して。
一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会

第6回学術大会【開催報告】

2022年9月18(日)に開催された「第6回学術大会」は、会場とオンラインの同時開催で行い、医療関係者や一般企業の方、研究機関の方、患者様、そして一般の方など沢山の方々にご参加いただきました。

コロナ禍にもかかわらず、皆様のお陰で無事に開催できましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。また会場では、感染拡大防止にご協力をいただきましてありがとうございます。

オープニング

開会の辞

►代表理事 田中 善 先生(医療法人仁善会田中クリニック 理事長)

はじめに、大会長である代表理事の田中 善 先生からご挨拶がありました。
当研究会が2017年に発足され、無事に6年目を迎えることができた御礼と、そして、ASDのほか様々な疾患への今後の取組に向けたご協力のお願いを述べられました。


腎疾患への取り組み

午前の部は、田中 善 先生の腎疾患への取り組みでスタート。座長は、理事の麻植ホルム正之 先生(医療法人LAGOM ライフクリニック蓼科 理事長)でした。

►田中 善 先生(医療法人仁善会田中クリニック 理事長)

田中先生は、がんの先進医療を中心に、分子栄養学、免疫学、歯科口腔に環境などを駆使した統合医療を推進され、予防医学の発展に寄与することを心掛け医療を実践されています。今後進めていく腎疾患に対する臨床的検証について、FMTにより腎機能低下を抑制できる可能性があることについて、お話していただきました。

腸内フローラ移植臨床研究会における今後の臨床研究についてー腎疾患への取り組み
代表理事 田中 善 先生
医療法人仁善会田中クリニック 理事長

当研究会は現在まで腸内フローラ移植(FMT)の臨床的な研究により、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などの消化器疾患のみならず、子供の自閉スペクトラム症や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患などにおいて成果を上げてきています。今後は、腎疾患に対する臨床的検証を進めていきたいと思っています。腸腎連関の観点から、積極的治療法のない透析導入前の保存期腎不全において、FMTにより腎機能低下を抑制できる可能性があること。今回は腎疾患に対するFMTの応用について問題提起をしたいと思います。

►豊福祥生 先生(兵庫みなと動物病院 院長)

豊福先生は、動物達が健康でいられることはもちろん、ご家族の想いにも耳を傾けた診療を心がけている獣医師です。現在腎疾患の犬猫に試験的に、水素NanoGAS®ウォーター飲用と腸内フローラ移植をお試しいただいており、その経過についてご報告いただきました。

慢性腎臓病の犬猫における腸内フローラ移植の安全性および効果についての検討
豊福祥生 先生
兵庫みなと動物病院 院長

獣医療における糞便微生物移植(FMT)は、犬、猫、豚、馬、牛、鶏、猿など幅広い動物種において報告があり、未だエビデンスレベルが高い治療法であるとは言えないものの、有効な治療法となる可能性が示唆されています。慢性腎臓病(CKD)は犬と猫にも日常的に遭遇し、特に高齢猫では罹患率が高い疾患であり、療法食、輸液療法、薬剤療法による治療が一般的です。この度、CKDの犬猫にFMTを実施する機会を得たので、その経過を報告します。

炎症性腸疾患症例報告

続いての座長は、医療法人悠亜会かわい内科クリニック 理事長の川井勇一先生でした。

►木村 衛 先生(医療法人桂名会 木村病院 理事長)

地域の健康管理、医療リハビリを担う目的で、昭和47年に開設された木村病院は、腸内フローラ移植においても、診療科を超えて様々な疾患に取り組んでいただいております。NanoGAS®-FMTを行った潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群の症例についてご報告いただきました。

腸内フローラ移植が有効であった過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎の症例について
木村 衛 先生
医療法人桂名会 木村病院 理事長

木村病院 木村 衛先生糞便微生物移植(FMT)は腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ(dysbiosis)を改善させる方法として期待されています。腸内フローラ移植臨床研究会では微細な泡を溶存させたナノバブル水を用いてFMT 移植(NanoGAS®-FMT)を行っています。今回地域のプライマリケアを担っている当院でのNanoGAS®-FMTを行った潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群の症例についての有用性、安全性、手技の簡便性について報告いたします。

NanoGAS®ウォーター基礎研究発表

森下理咲子(シンバイオシス株式会社

シンバイオシス株式会社は、NanoGAS®の基礎研究で泡の特性が解明されてきたことで、2020年4月から神戸学院大学、さらに北九州市立大学との共同研究を行っております。2022年の新たな研究の報告をいたしました。

革新的素材:NanoGAS®の医薬・食品分野における利活用の探索
森下理咲子
シンバイオシス株式会社

NanoGAS®(Nanobubble)は気体を液中に長期間保持できる能力だけでなく、生体に対する多機能素材として高いポテンシャルを持っています。一般的なNanobubbleは、洗浄や各種産業界においてその利活用が始まっていますが、ヘルスサイエンス領域における有用性に関しては発展途上です。この魅力が尽きないユニークな物理化学的特性を理解しつつ基礎研究を進めることで、医薬・医療分野におけるNanoGAS®の”新たなモダリティ”となる可能性を探索しています。
また、今年は食品加工業にも目を向け、一般利用におけるNanoGAS®の有用性も明らかにしました。今回はこの2年間の研究成果を総括して報告させて頂きます。

ランチョンセミナー

►北村 愛 様(発酵食スペシャリスト/一般社団法人LOVE I FOOD EDUCATION 代表理事)

北村さんは、病弱だった自身が食事で生きる力を得た経験から、生きている発酵食を通して美味しくて幸せになれる食生活を提案されています。精製された糖を控える方法を伝授していただきました。

腸内細菌が喜ぶ糖質~発酵調味料の可能性
北村 愛 様
発酵食スペシャリスト/一般社団法人LOVE I FOOD EDUCATION 代表理事

腸のことを考えると避けたいものの一つに「精製糖」があります。現代ではいつでもコンビニエンスストアなどでもスイーツが購入できてしまいます。
『甘いものは食べたい、でも避けたい、どうしたらいいの?』そんな悩みを持たれている方はたくさんいらっしゃいます。
わたしもお菓子が大好きでしたが、お菓子から卒業できたのは「甘酒」があったからです。
甘酒はオリゴ糖や発酵代謝物が豊富で腸にとっても嬉しい糖分。その甘酒を使って美味しいスイーツを作ることができ、さらにお料理にも使えます。
発酵調味料の魅力をお伝えします。

企業紹介

お昼休憩中に、協賛企業様をご紹介させていただきました。

ハートスフードクリエーツ株式会社

有限会社酵素科学研究所

株式会社SOPHIA

株式会社リタニアルバイオサイエンス

大高酵素株式会社

基調講演

午後の部は、ASDに関する基調講演でスタートしました。座長は、専務理事のルークス芦屋クリニック 院長 城谷昌彦先生にお願いしました。

►土屋 賢治 博士(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 特任教授)

昨年基調講演をしてくださった片山泰一教授と共に「子供の心の発達」を研究されている土屋賢治教授がご登壇してくださいました。

当研究会でもASDのお子様の移植の前後に計測を取り入れている「視点計測装置ゲイズファインダー」は、幼児の社会性を客観的に測定することを目的とし、浜松医科大学・大阪大学大学院・金沢大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科とJVCケンウッドが共同で開発されました。

ゲイズファインダーは、2分程度画面を見るだけの視線の計測により、人の興味や脳の働きとの関連性を可視化、客観的・定量的に評価可能となり、何に興味を持っているか、何を目で追っているのかがわかる計測機器です。

土屋先生は、そのゲイズファインダーの研究開発に多大な貢献をされました。

自閉スペクトラム症(ASD)に関する科学的知見の蓄積をどう利用すればよいか - 研究から臨床への展開-
土屋 賢治 博士
浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 特任教授

 神経発達症(発達障がい)の一つである自閉スペクトラム症(ASD)の小児における有病率は、2~3%です。昨今、「発達障がい」「自閉スペクトラム症」に対する社会的な理解が広がり、合理的配慮への意識も高まっています。しかし、ASDの原因は不明のままであり、生物学的治療法に有効性が確立したものもありません。したがって、臨床現場でわたしたちがASD児・者と関わるためには、限られた知識・ノウハウ・技法をどのように展開し利用するかについての見識やヴィジョンをもつことがつよく求められます。
 本講演では、ASDの臨床的特徴とその生物学的・生理学的背景に関する最近の科学的知見について整理を試みます。また、臨床現場においてASDがどのように診断され、ASD児にどのような治療的介入がなされているのか、を紹介します。そのうえで、「科学的知見」と「臨床現場での現実的な実践」がどのようにブレンドされるべきかについて、とくにASDの診断方法に焦点を当てて議論します。

ASD症例報告

城谷先生の症例報告の座長は、理事である医療法人喜和会 喜多村クリニック 院長 喜多村邦弘先生でした。
城谷先生の書籍のご紹介もしてくださいました。

►城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)

従来の医療と、分子栄養学的アプローチと、心理学的アプローチから、薬だけに頼らず、お悩みの症状の根本的な原因を突き止め、それに対処することで、全ての皆様がお持ちの「自己治癒力」を引き出す医療を目指していらっしゃいます。

昨年に引き続きASDの症例を重ねられ、腸内フローラバランス・ゲイズファインダー・SRS-2など複数の指標を元に、移植前後の変化について発表していただきました。

ASDに対するNanoGAS®︎を使用したFMTの症例報告
専務理事 城谷昌彦 先生
ルークス芦屋クリニック 院長

 自閉スペクトラム症(以下ASD)の原因はまだ特定されてておらず、抜本的な治療は未だ確立されたものはありません。
 近年、ASDの症状に腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が関連していることが明らかになっており、腸内フローラ移植(糞便細菌叢移植:Fecal Microbiota Transplantation;FMT)などにより腸内細菌叢を是正することの有効性や安全性が議論されるようになってきました。
 我々は当研究会の2017年の発足以降、ASDに対してNanoGAS®︎水を使ったFMTを行ってきましたが、中にはFMT施行直後より癇癪や切り替えの悪さなどの症状が軽減した症例や、意思の疎通性が改善した例を経験しました。
 今回、我々がASDの特徴的と考えている腸内細菌叢の傾向に関する考察及び、NonaGAS®︎を使ったFMTが有効であったASD症例を文献的考察を加えて報告します。

パネルディスカッション

『自閉スペクトラム症の子供たちの未来について』

 土屋賢治 博士(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 特任教授)
 片山泰一 博士(大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 副研究科長/分子生物遺伝学研究領域 教授)
 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)
 畠中直美 さん(一般社団法人チャレンジドLIFE 代表)
 喜多村邦弘 先生(医療法人喜和会 喜多村クリニック 理事長)

土屋教授、片山教授、喜多村先生、そしてご子息の移植を経験された畠中さん、それぞれの立場でのご意見を、城谷先生がファシリテーターとして聞き出してくださりました。

さらに、会場やオンラインで参加された方からお寄せいただいたASDに関する質問にも、回答させていただきました。

NanoGAS®ウォーター研究の展望

►清水 真(シンバイオシス株式会社 上席研究員)

この1年で「ナノバブルを使った腸内フローラ移植」「ナノバブル発生装置の製法と装置」の特許査定がおり、当研究会の腸内フローラ移植の独自性が明らかになってまいりました。

そしてこの夏、昨年の学術大会で、開発に着手すると宣言した「菌液自動精製装置」の第1号機が完成しました。これにより腸内細菌にとってより適した環境での精製が可能となりました。

更に進化する、腸内フローラ移植の可能性をお話いただきました。

これからのNanoGAS®‐FMTについて
評議員 清水 真
シンバイオシス株式会社

腸内フローラ移植のもっとも古い起源は4世紀頃の中国で、下痢が止まらない人のお尻に健康な人の便を入れたところ下痢が治ったことが最初の治療例だと言われています。それから時は下り、1958年の偽膜性腸炎に関する報告を皮切りに、欧米諸国では糞便微生物移植(腸内フローラ移植)の研究が進んできました。
2013年のオランダの研究で、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)に対する治療効果がきっかけに、2014年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)が、「CDIの多剤耐性時に、腸内フローラ移植が第一に選択すべき治療法である」と位置づけ、医学的にもその有効性が証明されつつあります。
我々は、抗生剤を使わず、便の溶解に独自の特許技術である「NanoGAS®」を用い、他人の腸内細菌をレシピエントの腸粘膜層に定着させる技術を実用化しました。そして次に目指すのは、限りなく腸管に近い環境で移植用菌液を精製することです。世界初、菌液自動精製装置「モノトーン」の開発とこれから我々が目指す、NanoGAS®‐FMTについてお話します。

今後の取り組みについて

『腸内フローラ移植の可能性』

喜多村邦弘 先生(医療法人喜和会 喜多村クリニック 理事長)
春名令子 先生(医療法人 はるなクリニック 副院長)
有沢祥子 先生(医療法人愛星会 星ヶ丘皮膚科 院長)
和久晋三 先生(和久医院 院長)
川井勇一 先生(医療法人悠亜会 かわい内科クリニック 理事長)

実際に移植に携わられている先生、NanoGAS®を使った院内限定販売の皮膚ローションを開発された先生方から、腸内フローラ移植、研究会の今後の可能性についてお話していただきました。

閉会の辞

►専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)

最後に、専務理事の城谷昌彦先生から、日頃の感謝と来年の第7回学術大会のご案内をさせていただき、閉会いたしました。

第7回学術大会につきまして

第7回学術大会は、下記の通り開催いたします。
腸内フローラ移植の基礎研究報告・症例報告など、皆様方に日頃の研究の成果をご報告いたしますので、皆様のご来場をお待ちしております。

【日時】2023年9月17日(日) 11:00~(予定)

【場所】リーガロイヤルホテル大阪

最後に

コロナ禍・台風の中にもかかわらず、無事に開催できましたのは、これもひとえに、皆様のご支援とご協力のお蔭と感謝しております。本当にありがとうございました。

来年は、今年よりもまた一歩前進できますように、そして少しでも皆様のお困りごとを解決できるよう日々研究を重ねてまいります。引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。