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移植体験記6「初めての便移植」<自閉スペクトラム症10歳男児>

兵庫県のルークス芦屋クリニックで移植をされた自閉スペクトラム症の患者様のお母様から伺ったお話を、かわいいイラスト付きでご紹介します。第6弾・最終回です。

今回お話を伺った畠中直美さんは、3人の男の子のお母様です。上のお子様が自閉スペクトラム症(=ASD)と診断されたことをきっかけに、一般社団法人チャレンジドLIFE を立ち上げられました。現在は、障がいのある無しに関わらず、心地よく活力ある日々を過ごせる社会を目指すべく、様々な活動に取り組んでこられています。

イラストは、かめさんが書いてくださいました。

初めての便移植

便移植を行うことを決めて書類などの手続きを終え、いよいよ便移植の日が近づいてきました。


今回は、今までのような簡単な検査だけの通院とは違うため、事前に便移植を行うことを長男へ伝えたうえで病院へ連れて行こうと思い、言葉を選びながら便移植について長男へ説明しました。しかし、これが長男の不安をあおってしまいました。「お尻から何かされる。怖い!」と、病院へ行くことを全力で拒否してしまいました。

当日、なんとか説得して病院に到着したものの、入り口で20分座り込んで「怖い。病院へ入りたくない」と動かない息子をあの手この手でなだめすかし、なんとか待合室へ入ることができました。


全身に力が入って明らかに緊張している長男と、長男の様子を見て不安いっぱいになってしまった私に対し、看護師さんたちは慣れた感じでニコニコ対応してくださいました。

長男は、待合室には入れたものの、そこから頑なに動こうとしません。そこで、前回の通院時に長男の対応をしてくださった看護師さんが、診察室から血圧計を運んできてくださいました。そして待合室で楽しく話しながら血圧を測っていると、徐々に長男の緊張がほぐれ、少し笑顔も見られるようになりました。そんな長男の変化をゆっくり見ながら、看護師さんが徐々に処置室へと誘導してくださいました。


処置室へ移動できたものの、いざベッドを目の前にすると、長男は涙目になり部屋から逃げだそうとします。

ここでもずいぶん時間をかけて長男を説得したのですが、「嫌だ!」と言い続け身体から力は抜けません。

その様子から、長男が自ら進んで処置を受けるのは難しいと、私、先生、看護師さんで判断し、タイミングをみて力づくでも長男をベッドに寝かせ便移植を決行することに決めました。


今振り返ると、本当に素早いチームプレイだったなあと思います。長男がふと処置ベッドに座ったその瞬間に、長男をベッドに寝かせて押さえ「今からお尻に入れるよ!」と便移植を決行しました。

当然、本人はびっくりして大声で泣き叫びましたが、そのまま2~3分程度、おとな3人で押さえて決行です。

移植用の便は専用の液体で薄められており、点滴パックのようなものに入っています。その茶色い液体が入っているパックからつながる管の先に柔らかいゴムがついており、その柔らかいゴムの管をお尻に入れます。

移植と聞くと大がかりですが、スムーズに進めば2分もかからない処置でした。

おそらく、長男の場合は痛いというよりも、お尻に何かをされているという恐怖感でパニックになり大泣きしたのではないかと思います。実際にお子さんが便移植を受けた他の保護者の方は、「タブレットで動画を見ながら子供がベッドに横になっていたら、あっという間に終わってニコニコしていましたよ。」と話してくださいました。


ちなみに長男も、便移植が終わってしまえば、さっきまで泣き叫んでいたのが嘘みたいにケロッとしていました。「ちょっとおしりがモソモソする」と表現していましたが、1時間後には「おしり大丈夫になった」と笑って言っていました。

便移植は、1度で終わるのではなく、期間をあけながら何度か通院し行います。長男も、1回目の処置こそ大暴れでしたが、回を重ねるごとに痛い処置ではない、すぐ終わるということが分かってきて、落ち着いて便移植を受けることができるようになりました。


便移植をすること自体が「うちの子には無理だ」と考える方も多いと思います。

我が家も初回は本当に大変でしたが、それでも処置は数分で終わります。大変なのはほんの数分間。その数分間も親ひとりで頑張るのではなく、先生や看護師さんたちが全力で助けてくれます。

私は毎回「とりあえず病院に行くことができれば、先生方が助けてくださるから大丈夫!」と自分に言い聞かせて息子と通っていました。


そして、初めての便移植を行った次の日の朝のことです。

いつもなら、長男が一番に起きてテレビをつけ、アニメを見ながら私が起きてくるのを待つのですが、この日は1階からテレビの音が聞こえない。

「あれ?まだ寝てるのかな?」とリビングに向かうと、机に向かって、ご機嫌に学校の線つなぎのプリントをしていたのです。今までになかった光景を目にして本当にびっくりしました。ここから今までになかった変化がたくさん起きました。(詳しくは第1話をお読みくださいね)

便移植と並行して、SRS-2(対人応答性尺度)チェックシートを記入します。このチェックシートを通し、子どもの変化を細かく見ていくことができます。

例えば「ひとりでいる時と比べて誰かと一緒にいると、そわそわして落ち着かない様子である」というような問いに対し、子どもの変化をチェックしていきます。これら65項目の質問を通して、我が子の変化を客観的に振り返ることができます。


全ての便移植を終え、改めて感じる事は、思い切ってあのタイミングで便移植を実施してよかったということです。便移植を通して様々な嬉しい変化が長男に起こったのと同時に、長男の日々の言動が穏やかになったなあと思います。

イライラして癇癪が発動すると、対応する親も大変ですが、きっと本人が一番しんどかったのではないかと思います。そう思うと、今は勉強に対しても日常に対しても、穏やかに、本人にとって楽に向き合えるようになっているのではないかと思います。

長男のお腹の中に入った応援団としての菌たちが、これからも元気に生き続けてくれますようにと願いつつ、これからの長男の成長を楽しみに共に過ごしていこうと思います。

<おわり>

※症状の改善には個人差があります

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