第7回学術大会インタビュー<塚本悟郎氏>
『専門家が集まる腸内フローラ移植臨床研究会
〜もっと受けやすい治療を目指し、研究・開発に挑む〜』
薬剤師・工学博士 塚本悟郎:元鐘紡(株)取締役・創薬研究所長、元米国ピッツバーグ大学客員教授、元長岡技術科学大学教授
新薬の研究・開発がライフワークの塚本悟郎氏等によって発明され、世界で初めて世に出された偏頭痛薬はNHKテレビや新聞でも報道され、他にも二つの新薬が世に送り出されました。当研究会設立時から監事としてご尽力いただいている塚本氏に、ご自身が「画期的新薬に匹敵する」と認める、本研究会の糞便微生物叢移植の可能性についてうかがいました。
――糞便微生物叢移植の可能性への期待について、お聞かせください。
近年、糞便微生物叢移植は多くの国で研究・開発が行われていますが、確たる方法は知られていないのが現状です。ところが、数年前に当研究会の清水真臨床検査技師は新規の糞便微生物叢移植方法を発明・開発しました。本法は、糞便微生物叢移植液の調製法から患者さんへの投与方法が従来とは全く異なっており、国内特許は取得済みであると同時に国際特許も出願中であることからも、その新規性が窺えます。今日の大会では、本法を用いた自閉スペクトラム症の子供達への臨床研究成果が発表されますが、極めて興味ある結果が得られていますのでご期待ください。しかし、この新薬が一般に使用されるにはまだまだ時間がかかります。
――「時間がかかる」とのお言葉ですが、具体的にどのくらいの時間が必要なのでしょうか。またなぜ、時間はかかってしまうのでしょうか。
新薬の研究・開発に時間がかかるのは有名な話であり、それを理解するのは難しいですが、簡単に説明しましょう。新薬の候補が発見・発明される時間ははっきり言えるような単純なものではないですが、強いて言えば、5〜15年でしょうか。運よく見出された候補は非臨床試験(ヒト以外を用いた各種の試験)を無事に通過すると、次いでヒトにとって有効で安全であるかどうかを調べる臨床試験(治験)に進み、それには一般的に3~7年かかります。その試験結果で薬としての判断が下されます。それでOKならば、厚生労働省に審査を依頼し、その審査を通過した後に、学識経験者などで構成される薬事・食品衛生審査会の審議を経て、厚生労働大臣が許可すると、医薬品として製造・販売することができます。その過程に1~2年かかります。従って、我々の現在の特定臨床研究が予測通りに終了するとして、次の“治験と審査”の期間を合計すると、4〜9年かかることになりますが、これは一般的な年数で、最短の4年以下で世に出したいと考えております。
――では最後に腸内フローラ移植臨床研究会の今後の展望についてお願いします。
従来から行われている生理食塩水を用いる移植ではなく、他人の腸内細菌叢をより自然な形で患者さんに届けるために、清水臨床検査技師ならではの知識・経験・技術に基づいて生み出された「独自製法のナノバブル技術を糞便微生物叢移植に利用する方法」には非常に多くの応用が秘められています。現在の自閉スペクトラム症への使用認可が取得されれば、次々と新しいテーマがスタートするでしょう。
医療のプロである田中善ドクターを中心に多くの医師の先生を初め、医薬品の研究・開発のプロである岩﨑最高顧問を筆頭に濱口・嶋・大谷・石原の各顧問軍団、更には大阪大学の片山泰一博士、浜松医科大学の土屋賢治博士達の一流専門家から成るチーム力のお陰で現在に至っています。本研究会の将来は明るく、ますます発展していくことでしょう。
化学をベースにした創薬をライフワークにしてきた私は、所謂、生物学的製剤(生物が産生するタンパク質が主薬)でない、正に腸内細菌叢そのものを薬とするintestinal Bacteria Delivery System(iBDSと略称)という、画期的生物製剤とその技術に出会えたことに感謝しています。
第7回学術大会【開催報告】はこちらから
その他の 学術大会 に関する記事
Articles about other 学術大会
2024年02月04日
第7回学術大会インタビュー<塚本悟郎氏>
『専門家が集まる腸内フローラ移植臨床研究会〜もっと受けやすい治療を目指し、研究・開発に挑む〜』薬剤師・工学博士 塚本悟郎:元鐘紡(株)取締役・創薬研究所長、元米国ピッツバーグ大学客員教授、元長岡技術科学大学教授 新薬の […]
2023年09月27日
第7回学術大会【開催報告】
2023年9月17(日)に「第7回学術大会」が開催されました。会場とオンラインの同時開催で行い、医療関係者や一般企業の方、研究機関の方、患者様、そして一般の方など沢山の方々にご参加いただきました。皆様のお陰で無事に開催で […]
2022年10月05日
第6回学術大会【開催報告】
2022年9月18(日)に開催された「第6回学術大会」は、会場とオンラインの同時開催で行い、医療関係者や一般企業の方、研究機関の方、患者様、そして一般の方など沢山の方々にご参加いただきました。 コロナ禍にもかかわらず、皆 […]