腸内フローラ移植(便移植)を受けられる、国内唯一の学術的研究会です。臨床医と臨床検査技師が届ける世界最高水準の安全と効果を目指して。
一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会
TEL: 06-6948-5088

ドナーのおなかから患者様のおなかに届くまで

ドナーのおなかから患者様のおなかに届くまで


腸内フローラ移植という方法の特性上、ドナーから収集する便に含まれる腸内細菌の数や構成比は常に一定というわけではありません。また、ご提供いただいた便から腸内細菌を取り出す作業は、臨床検査技師がすべて手作業で行っています。

そのような背景の中で、安全性はもちろん、できるだけ安定した元気な腸内細菌たちを患者様のおなかにお届けするため、Japanbiome®では独自の研修を修了した職員が、以下の手順に沿って便の管理や加工を行います。

 A)ドナーへの便採取研修

ドナーには、便採取時の工程を一つ一つ写真付きで解説し、不純物等が混じらないよう、また提出までの経過時間や保管状態が適切に守られるよう、研修を行います。

 B)ドナー便の梱包確認

便の品質保持、いたずら防止等の観点から、便の受け入れ時に酸素不透過袋や開封防止シール、保冷剤等がマニュアル通りに使用されているかを確認します。

 C)ドナー便の状態確認・ユニットID付与

ドナー便の受入・管理体制に従い、ドナーから提出された簡易問診票、ブリストルスケール、重量測定などから、ドナーの健康状態と便の安全性を確認します。
ドナー便には固有のIDが付与され、その他の情報と共にデータベースへ登録されます。

 D)超低温冷凍庫にて保管

便を容器に入れ、ユニットID等の記載されたシールを貼付し、マイナス80℃にて保管します。添加剤の人体への影響を考慮し、グリセロールなどの凍結保護材は使用しておりません。

 E)便の融解

前後検査に合格した便を、ゆっくり温度を下げながら融解します。多くの腸内フローラ移植の文献では、マイナス80℃からいきなり湯せんなどで融解する記述が多く見られますが、私たちは時間をかけて融解するほうが菌の損傷が少ないと考えています。

 F)作業環境の整備

便を処理する作業場は、予め紫外線殺菌を施し、陰圧をかけて不純物が極力混じらないようにします。また、処理に使用する器具は予めすべて消毒を施しておきます。

 G)便の原液化

冷蔵状態に戻した便を、規定の工程に沿って処理します。これにより不純物を極力取り除いた液体を、当ドナーバンクでは「原液」と呼んでいます。

※下記の文献より、再発性のクロストリジウム・ディフィシル感染症に対する腸内フローラ移植の治療効果は、処理現場における酸素の有無に左右されないとの報告があります。一方で他の疾患には嫌気的に処理したほうが良いという報告もあります。
これらを踏まえ、現時点において当ドナーバンクでは、ドナーからの便収集と凍結保管時には可能な限り嫌気環境に、便の処理時にのみ大気環境にて行っております。

・European consensus conference on faecal microbiota transplantation in clinical practice | Gut(外部リンク
 H)原液IDの付与・保管

ドナー便ごとに発行したユニットIDとは別に、原液IDを付与します。その後、患者様のもとへ届けられるまで冷蔵状態にて保管します。

 I)移植用菌液の作製

主治医から患者様情報を取得し、ドナーを選定します。当該ドナーの便から作製した原液から必要分だけ取り出し、菌液用の処理を行います。これで菌液の完成です。菌液の状態になってから、10日以内の移植をお願いしています。
※原液〜移植用菌液の作製方法については、現在特許申請中です。

 J)医療機関までの菌液の輸送

移植菌液の輸送時は、予期せぬリスクが伴います。当ドナーバンクでは、下記の取り組みによって菌液輸送時の事故や品質劣化の防止に努めています。

脱酸素剤、酸素不透過袋の使用により、嫌気的な環境での輸送を実現
開封防止シールにより、第三者によるいたずらを防止
密閉袋、緩衝材等の使用により、万が一の漏れを防止
保冷剤の使用、冷蔵輸送便の使用により、菌の予期せぬ増殖を防止
月に一度の抜き打ち温度テストで、温度管理状態をチェック

菌液の輸送について

お届けする菌液は、感染症法の定める病原体管理規制には該当せず、通常の宅配業者による輸送が認められています。ただし、患者様にお届けする大切な腸内細菌であることから、世界保健機構(WHO)の「感染性物質の輸送規制に関するガイダンス」のカテゴリーBに準ずる梱包を採用しています。また、以上の事情を宅配業者に説明し、全社的に輸送の許可を得ております。
詳しくは厚生労働省のウェブサイト、ならびに国立感染症研究所のウェブサイトをご覧ください。

・病原体等の国内輸送について 厚生労働省健康局結核感染症課(外部リンク
・感染性物質の輸送規制に関するガイダンス 世界保健機構/国立感染症研究所(外部リンク

トレーサビリティへの取組み

当ドナーバンクでは、万が一の有害事象発生時などに速やかに対応し、遡及調査ができるよう、トレーサビリティの向上に取り組んでいます。重複のない固有のIDを複数組み合わせることにより、特定の患者様が特定の日に行った移植に使用した菌液に紐づく情報を瞬時に把握することができます。

[ドナーID]
ドナーは、2桁のドナーNo.+コードネームからなるドナーIDを有する。ドナーIDは、ドナー本人には知らされない。

[ユニットID]
提供された便ひとつひとつに、ドナーNo.や採取日からなる9桁のユニットIDを付与する。

[原液ID]
作製した原液ひとつひとつに、原液処理日とドナーNo.からなる原液IDを付与する。原液IDは、データベース上でユニットIDと紐付いている。

使用した便情報の把握

上記のIDすべてを、患者様の移植ごとに記録しています。これにより、特定の患者様のある特定日の移植に使用した菌液について、以下の情報が瞬時にわかります。

使用した菌液の原液処理日
使用した菌液の便提供日、その時の簡易問診票
同じ原液から作製した菌液を使った他の患者様の状態
使用した便を提出した期間前後のドナーの検査結果
ドナーの氏名、性別、生年月日、住所、連絡先など
ただし、ドナーの個人情報保護の観点から、ID等は有害事象発生時等の緊急時以外はドナーバンク職員の管理用に使用します。

原液の保管

原液の一部はマイナス80℃の冷凍庫に戻され、最低1年間保管されます。これにより、有害事象発生時等にいつでも便の追加検査を行えるようにしています。