他の糞便微生物叢移植との違い
  • 独自製法のナノバブル技術をFMTに応用することで、腸管への菌の定着を効率化
  • 国内初のFMT専用ドナーバンクで集中管理された冷凍保存ドナー便を安定的に使用
  • 疾患別・症状別に複数のドナーを選択し、個々の移植計画を設計
  • 濃度勾配をつけた移植用菌液を用い、計画的複数回移植による定着の短期間化
  • 抗生剤などの薬剤を一切使わず、患者さんにも菌にも負担が少ない簡便さ
  • 大腸内視鏡を使わずゴムの腸カテーテル注腸法により、事前処置や食事などの制限がない
  • 独自開発した菌液自動調整装置により、腸管内に近い環境で調整するため高い再現性を実現

一般に行われている糞便微生物叢移植では、大量の抗生剤投与による患者フローラバランスへの悪影響や、生理食塩水を溶媒とするためドナー菌の定着効率を下げてしまう、というデメリットが挙げられます。

一方、NanoGAS®‐FMTは、ドナーバンクに所属するドナーの管理された便を使用、フレキシブルな濃度調整を実現。やわらかいゴム製のカテーテル注腸を使用し、事前の抗生剤投与や大腸内視鏡使用における事前処置が不要。独自に開発した、「NanoGAS®水」を移植用菌液の溶媒として使うことにより、定着効果を数段高めることができます。

他の方法との比較

当研究会法(シンバイオシス社のFMT法)
独自開発のプロトコル
国内外で行われている一般的なFMT法
(アムステルダムプロトコル準拠)
溶媒の特徴 シンバイオシス社開発
「NanoGAS®水」
生理食塩水、5%グリセロールなど
調整の手段 現在は手作業
次年度より菌液自動調整装置
現在は手作業
自動化の予定なし
ドナー 自社のドナーバンク
Japanbiome
国内は「二親等以内の親族」
海外は便バンク
移植回数 濃度勾配をつけ3回〜6回がベース
随時追加
治験疾患は原則1回
疾患によって回数に大差あり
便の保管 -80℃以下の凍結便 国内は採便2時間以内の新鮮便
海外は-80℃以下の凍結便
菌液濃度 1:10〜1:45
NanoGAS®水にて調整
1:5程度
生理食塩水にて調整
投与方法 ゴムの腸カテーテルによる注腸法 大腸内視鏡、十二指腸内視鏡
カプセルによる経口投与(海外)
その他 前・後の処置なし
侵襲性ほとんどなし
食事制限、抗生剤投与、腸管洗浄
患者さんの負担が大きい

※糞便微生物叢移植技術に関する特許を申請中です

マイナスの帯電

ナノバブルはマイナスに帯電しているという性質を持ち、気泡同士が反発しあう為結合しません。その為、プラスに帯電している有機的な汚れを引き寄せ、吸着します。泡の大きさが非常に小さいため、汚れの下側に入り込み、汚れを浮き上がらせる架橋効果が期待できます。界面活性効果とも呼びます。
糞便微生物叢移植では、腸壁の有機的な汚れの除去や、移植された腸内細菌の持つ鞭毛や繊毛を損なうことなく腸管の粘液層へ菌を誘導します。

菌液の品質維持期間を延長

「NanoGAS®水」は泡が極めて小さい為、浮力が働きません。
その為、長期間泡が消えることなく液体中に存在します。
糞便微生物叢移植では、移植までの間に菌同士の接触を防ぎ、菌液の状態が意図せぬバランスに歪んでしまわないよう、凍結に準ずる程度の保存性能を発揮すると期待されます。

NanoGAS®‐FMTにおける移植用菌液の特徴は、便の溶解に「NanoGAS®水」を使用しているところです。ナノバブルは産業分野でも広く活用されている技術ですが、「NanoGAS®水」は、通常のナノバブルよりも、気泡の数が圧倒的に多く、長期間安定で輸送が可能であるという特徴を生かして、様々な活用法を生み出すことができます。この「NanoGAS®水」の特性を利用することで、本来ならIgA(免疫グロブリンA)等の自己免疫機能に阻まれて、うまく棲み着く(定着)ことができないとされていた他人(非自己)の腸内細菌を、効果的に定着させるために開発されました。

現在国内で治験中の糞便微生物叢移植では、便から精製した菌液を移植することに対する心理的な抵抗感を少しでも和らげるため、多くの場合は二親等以内の親族から健康なドナーを見つける必要があります。一方、アメリカやイギリスでは、便バンクが設立され、健康な第三者の便を利用して糞便微生物叢移植が行われています。
私たちは、多様性のある腸内細菌のバランスが重要であると考え、糞便微生物叢移植には遺伝子学的にも生活環境も違う第三者のドナーを使用する方が効果は高いと考えています。その為、NanoGAS®‐FMTは、血液検査や便検査に加え、生活習慣の管理や150項目以上に及ぶ厳しい問診を定期的にパスし続けているドナーのみを登録しているシンバイオシス社附属の【ドナーバンク(Japanbiome)】より便の提供を受けています。

移植方法の工夫

現在、アメリカで政府から公に糞便微生物叢移植が認められているのは、CDI(クロストリジウム・ディフィシル感染症)のみです。CDIでは基本的に1回のみの移植で治験が行われています。
他にも潰瘍性大腸炎(例:40回)や自閉スペクトラム症(例:8週間・週1回)など疾患によってプロトコルが変えられ、治験が行われています。
NanoGAS®‐FMTでは、疾患によって大きく移植回数が変わることはなく、年齢と罹患年数が結果に深く関わっていると考え、3~6回の移植をベースに、追加の移植が必要かどうかを主治医と患者さんに決めていただいています。

国内における治験では、事前に検査を行ったドナーの新鮮便を採取当日に使用するケースが多くみられます。NanoGAS®‐FMTでは、検査がされておらず、安全性が担保されていない新鮮便は使いません。しかも新鮮便を使う方法は、多くの方へ移植を届けられないという懸念がありました。
ドナーの健康状態及び糞便の安全性が充分に確認できて初めて、凍結した保存便を使用することにしています。安全性を第一優先し、凍結した保存便を使用しています。なお、添加剤による人体や菌への影響が定かではないことから、浣腸液としても使われる凍結保護剤(グリセロール)の添加はしておりません。

海外の論文に出てくる菌液の濃度は、1:5が一般的ですが、この濃度は濃すぎる可能性があります。
NanoGAS®‐FMTでは、ナノバブル技術の界面活性作用により、1:10〜1:45くらいに調整した菌液を用いています。

従来の方法では、経口カプセルや大腸内視鏡などが主流です。しかし、経口カプセルは粒が大きい上に、胃酸での損失を防ぐために胃酸抑制剤を使用します。さらに、大腸内視鏡では食事制限や下剤を免れない等、どちらも肉体的、精神的な苦痛を伴います。
NanoGAS®‐FMTは、柔らかいゴムのカテーテルによる移植で、菌を十分腸管に届けることができ、患者様の肉体的・精神的な苦痛はほとんどありません。

他の多くの治験や臨床応用では胃酸抑制剤や腸管洗浄剤の使用、移植前の食事制限などを伴います。抗生物質を一定期間服用して、あえて腸内フローラの多様性を一旦損なわせてから移植をするという方法が主流です。
NanoGAS®‐FMTでは、こういった事前処置は一切ありません。