過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群(IBS: Irritable Bowel Syndrome)は、慢性的な腹痛や腹部不快感とともに、下痢や便秘などの腸の機能異常を特徴とする疾患です。
この症状は、特に大腸の運動機能の異常によって引き起こされるとされています。IBSの診断は、他の消化器疾患が排除された上で行われるため、排除診断とも呼ばれます。
IBSは一般的に若年成人から中年にかけて発症し、一般的には成人の約10〜20%がIBSに罹患しているとされています。地域差もありますが、女性のIBS患者の割合は約60〜70%、男性の患者の割合は約30〜40%です。男性は、女性に比べて症状の訴えが少ないことが多く、診断が遅れることもあります。
IBSの原因は複雑で多岐にわたり、完全には解明されていませんが、いくつかの主要な要因が示唆されています。これらの要因は、腸の運動機能の異常、腸内フローラの異常、腸の過敏性、精神的ストレス、食事やライフスタイルの影響などです。
- 腸の運動機能の異常:
腸の運動機能が正常に働かないと、食物の移動が遅くなったり早くなったりすることで、下痢や便秘が引き起こされます。これがIBSの主な症状の一つである便通異常につながります。 - 腸内フローラの異常:
健康な腸内には多種多様な細菌がバランスよく存在し、消化や免疫機能に重要な役割を果たしています。しかし、IBS患者ではこのバランスが乱れていることが多く、腸内フローラの異常が症状の一因とされています。特に、腸内細菌の多様性が低下していることが確認されています。 - 腸の過敏性:
IBS患者は、腸が正常以上に敏感になっていることが多いです。これは、腸の神経が過敏になり、通常では感じないような腸の動きやガスの存在を痛みや不快感として感じるためです。 - 精神的ストレス:
ストレスはIBSの症状を悪化させる要因の一つです。ストレスによって腸の運動機能や腸内フローラに影響が及び、症状が悪化することがあります。また、IBS自体がストレスを引き起こす悪循環が存在します。 - 食事やライフスタイル:
食事内容や食生活の習慣もIBSに影響を与えます。例えば、脂肪分の多い食事やカフェイン、アルコール、特定の炭水化物がIBSの症状を悪化させることがあります。また、規則正しい生活や適度な運動が症状の管理に役立つことが知られています。
これらの要因が複雑に絡み合い、IBSの発症や症状の悪化に寄与していると考えられています。IBSの理解には、これらの多様な要因を総合的に考慮することが重要です。
IBSの治療法は主に症状の緩和を目的としており、患者一人ひとりの症状や生活習慣に合わせたアプローチが求められます。現在の治療法は以下の通りです。
- 食事療法:
食事療法はIBSの管理において非常に重要です。特にFODMAP制限食は、多くのIBS患者に効果があるとされています。FODMAPとは、腸で発酵しやすい短鎖炭水化物の総称で、これを制限することでガスの生成や腸の膨満感を抑えることができます。また、食物繊維の摂取を調整することも有効です。便秘型IBSには水溶性食物繊維が推奨され、一方でガス型や下痢型IBSには不溶性食物繊維の摂取が適度に制限されます。 - 薬物療法:
IBSの症状に応じて、さまざまな薬物が使用されます。抗けいれん薬は腸の痙攣を抑える効果があり、主に腹痛や不快感の軽減に使用されます。下痢型IBSには下痢止め薬、便秘型IBSには便秘薬が処方されます。また、近年では腸内細菌に働きかけるプロバイオティクスやプレバイオティクスの使用も注目されています。 - 心理療法:
心理的ストレスがIBSの症状を悪化させることがあるため、認知行動療法(CBT)やその他の心理療法が有効とされています。これらの療法は、ストレス管理や心身のリラクゼーションを促進し、IBSの症状を緩和するのに役立ちます。特に、CBTはIBSの症状に対する認知と行動の変化を促し、症状の管理に寄与します。
これらの治療法は、IBSの症状を緩和し、患者の生活の質を向上させるために組み合わせて用いられます。IBSの治療は個別化が重要であり、患者それぞれの症状やライフスタイルに合わせたアプローチが必要です。
Innovative
過敏性腸症候群の新しい治療法
近年、IBSの新しい治療法として注目されているのが、糞便微生物叢移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation)です。当研究会では、患者さんに優しい方法を採用した新しいFMT法であるNanoGAS®-FMT法を取り入れています。
移植前に抗菌薬を
使用しません
食事制限も腸管洗浄も
必要ありません
心と体に
優しい方法
Case Report
過敏性腸症候群の症例報告
NanoGAS®-FMT法を実施した医師による症例報告をご紹介します。
過去開催の学術大会での発表
当研究で実施しているNanoGAS®︎-FMT法による糞便微生物叢移植は過敏性腸症候群などの炎症性腸疾患のみならず、自閉スペクトラム症やアトピーアレルギー、生活習慣病などにも有効性が認められています。
第8回となる今年の学術大会においては、がんの早期発見、早期治療の重要性に対する理解が進み、様々な方法が開発されるなか、がん治療における腸内細菌叢移植の可能性と症例報告を発表いたします。また、昨年5月から開始した「自閉スペクトラム症に対する
新規糞便微生物移植法の有効性と安全性に関する特定臨床研究」の結果を報告いたします。