糞便微生物叢移植と免疫チェックポイント阻害薬の併用 症例紹介|虫垂癌・60代男性
症例紹介 60代男性 虫垂癌
基本情報
| 患者様: | 60代男性 |
| 主治医: | 医療法人仁善会 田中クリニック |
| 移植担当医療機関: | 医療法人仁善会 田中クリニック |
初診時情報
| 病名: | 虫垂癌 |
| 発症時期: | 2024年8月頃 |
| 移植目的: | 便秘の改善 |
| 主訴: | 腹部の違和感と便秘 |
| 既往歴: | 高血圧、糖尿病、緑内障 |
| 経緯、家族歴、生活習慣、サプリメントの利用状況など: | 母親が糖尿病、高血圧 |
移植情報
| 移植期間: | 2024/11/6〜2025/1/14 |
| 移植回数: | 移植6回 |
| 移植初回〜移植終了までの変化: |
| 【1回目移植前問診】 2024年5月ごろから、下腹部違和感あり。もともと便秘(Bristol stool scale Type2)であった。 8月頃:虫垂癌(Stage IV)と診断された。リンパ節転移、腹膜播種の疑いあり。CEAは300ng/mL以上。 10月頃:虫垂切除術を施行した(大腸約15cm、小腸約5cm切除)。 虫垂切除後、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与を開始予定。 ◇ 腸管内の抗酸化を向上する目的で高濃度水素NanoGAS®︎水を注腸した。 【2回目移植時問診】 特に変化はないとのこと。便通はコロコロの軟便から、棒状の硬い便に変化し、改善傾向である。 11月中旬から3週に1回、ICI(キイトルーダ:ペムブロリズマブ)を投与開始。投与後に手指関節の違和感あり。 ◇ 腸管内の抗酸化を向上する目的で高濃度水素NanoGAS®︎水を注腸した。 【3回目移植時問診】 以前は軟便のコロコロ便だったが、最近は棒状の硬めの便が出ているとのこと、 腸内フローラの変化の可能性が考えられる。 【4回目移植時問診】 便は毎日出る。 コロコロ便から便秘傾向、その後は下痢・便秘の繰り返しが認められた。 尿が濃い。 体調は不変。 キイトルーダは3週ごとに点滴投与中。糖尿病(DM)のためSGLT2阻害薬を使用中。 【5回目移植時問診】 再び便秘傾向。 免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ)は次回投与予定。その後6週ごと。 【6回目移植時問診】 体調は不変。 免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ)は6週に1回投与。 便通は、下痢傾向や便秘が繰り返して起こる。 手背部が熱く痛むことがある。 FMTは今回で一旦終了し、2週間後に腸内フローラバランス検査を施行。 その結果でFMTを継続するかどうかを決定予定。 【移植コース終了後の問診】 移植終了2週間後 CTでは吻合部再発認めず。術部周囲の腸間膜リンパ節、腹腔動脈右側のリンパ節が縮小。CEAは7.7ng/mL。 移植終了2か月後 CEAは10.1ng/mL。 移植終了3か月半後 CT検査では再発や新規病変は認めず。腸間膜リンパ節および腹腔動脈近傍のリンパ節に変化なし。CEAは9.2ng/mL。 移植終了4か月半後 糖尿病(DM)でSGLT2阻害薬を服用中。 現在、体調は良く経過観察。キイトルーダ6週に1回投与。 便通は良く、普通便を維持している。 移植終了6か月半後 CT検査では明らかな再発・転移は認めず。 腸間膜リンパ節、腹腔動脈近傍のリンパ節は変化なし。 便通は毎日あるが、軟便になったり硬くなったりする。CEAは8.4ng/mL。 移植終了約8か月後 左肩関節痛、鼻汁・咳などの風邪症状、便秘と下痢の反復が認められた。経過観察。CEAは9.0ng/mL。 移植終了約9か月後 CEAは5.7ng/mL。 CT検査では再発・転移なし。仕事や日常生活は普通に過ごしている。 |
腸内フローラバランス 比較データ

評価・考察
| 移植評価: | 著効 |
| 有害事象の有無: | なし |
| 移植評価: |
| 虫垂癌:著効。便秘改善。 頑固な便秘があり、高濃度水素NanoGAS®︎水単独の投与2回にて改善。糞便微生物叢移植後、腫瘍マーカーは低下した状態で推移している。CT上も再発・転移なし。 |
以上