腸内フローラ移植(便移植)を受けられる、国内唯一の学術的研究会です。臨床医と臨床検査技師が届ける世界最高水準の安全と効果を目指して。
一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会
TEL: 06-6379-3328

腸内フローラ移植とは

腸内フローラ移植とは



腸内フローラのバランスが私たちの健康や病気の発症に密接に関わっていることが広く知られるようになってきましたが、崩れてしまった腸内フローラをもとの状態に戻したり、理想の状態に変えたりするのは簡単ではありません。

そこで、崩れてしまった腸内細菌のバランスを整えるため、健康な人の腸内フローラを移植するという治療法に期待が高まっています。

学名:糞便微生物移植=Fecal Microbiota Transplantation(FMT)

科学者たちのあいだでは、「腸内フローラは臓器である」と言われることもあります。損なわれた臓器を移植することで健康を取り戻してきた人類の医学の進歩の過程を見ると、腸内フローラを移植することはごく自然なことなのかもしれません。

しかも、腸内フローラ移植は移植時の痛みや副作用が少なく、ドナーにとっても患者さんにとっても負担の軽い方法で行える点で、可能性のある方法です。

対象となる疾患や治療効果などについてはまだまだ不確定な要素が多いものの、これまでの医療のアプローチとは違ったかたちで病気の治療や予防に役立つのではないかと期待されています。

当研究会では、一般的に行われている方法とは違った独自の移植菌液精製方法を採用することで、従来法で課題とされていた菌の生着率、生着速度を解決することを目指しています。

主な対応疾病

潰瘍性大腸炎
クローン病
過敏性腸症候群(下痢、便秘、ガス)
精神疾患(うつ病、躁うつ病、パニック障害など)
自閉症
糖尿病(Ⅱ型)
高血糖・脂質異常症・高血圧
アトピー・アレルギー
がん
その他の自己免疫疾患、生活習慣病など
など

その他、どのような疾病でもぜひ一度ご相談ください。
※ただし、疾患の状態や投薬状況により、各移植医療機関の判断で移植対象とはしない場合があります。

腸内フローラとは

100兆の腸内細菌たちと共存共栄している



私たちのお腹には100兆以上の個性豊かな腸内細菌たちが住み着き、私たちが健康に暮らしていくお手伝いをしてくれています。免疫力、精神の安定、食べたものの代謝、組織の再生、全身の臓器との通信など、彼らの役割は多岐にわたります。
そんな腸内細菌の生態系を、「腸内細菌叢(そう)」または「腸内フローラ」と呼びます。腸内細菌たちは、私たちの心身の状態に合わせて日々少しずつ存在比率や働きの強さ(バランス)を変えながら、私たちの体のダメージを最小限にとどめてくれています。

けれど、食の欧米化や抗生物質の多用、行き過ぎた清潔主義、ストレスの多い生活などにより、現代人の多くは少なからず腸内フローラが乱れています。遺伝子解析技術の進歩により、腸内フローラの乱れが様々な疾患に関わっていることが明らかになってきました。

腸からイメージしやすい便秘や下痢だけではなく、太りやすさやアレルギー疾患、うつ病や自閉症にも腸内細菌との関わりが発見されています。
身体は自分ひとりのものではなく、100兆の腸内細菌たちと共存共栄していると言っても過言ではないのではないでしょうか。

海外と日本の比較

腸内細菌と国内外の動向



昨今の遺伝子解析技術の飛躍的な進歩により2003年に完了したヒトゲノム計画以降、これまで培養等で病原性のあるものを見つけ出す程度に留まっていた微生物に関する遺伝子解析の分野が注目を集めています。中でも腸内細菌、口腔内細菌、皮膚上細菌など、ヒトの体内外に存在する常在細菌が、ヒトの健康に寄与する一方で、感染症以外の様々な疾患にも関わっていることが明らかになりつつあります。

アメリカでは、2007年に「ヒトマイクロバイオーム計画」と称して、巨額の資金を投入した国家的プロジェクトが開始されました。このプロジェクトの目的は、ヒトに関わる細菌の在りようを明らかにすることです。特に腸内細菌はヒトの消化器内でもっとも多くの細菌が生息していることから、その注目度も高まっています。過敏性腸症候群や糖尿病などの疾患にはじまり、妊娠や出産と腸内細菌叢の関連にまで研究が及んでいます。

一方で日本国内でも、腸内環境を整えるための乳酸菌サプリメントやヨーグルトを始めとした食品の販売が活発に行われており、腸内細菌叢を主軸とする腸内環境のケアの重要性が叫ばれるようになりました。

腸内フローラ移植(FMT)の現状



いま、欧米を中心に世界中の研究者たちが腸内フローラ移植の研究に取り組んでいます。

腸内フローラの改善を目指す方法はいくつか存在しますが、中でも一定の基準をクリアした安全で健康なドナーの便から採取した腸内細菌を、注腸カテーテル、大腸内視鏡、十二指腸内視鏡、経口カプセル等の方法で患者の大腸内に投与する方法「腸内フローラ移植」の有効性の是非についての研究が加速度的に進んでいます。

腸内フローラ移植のもっとも古い起源を持つのは、実は中国だとされています。4世紀頃、下痢が止まらずに悩んでいた人のお尻から、健康な人の便を入れたところ下痢が治った、と言うのです。

それから時は下り、1958年の偽膜性腸炎に関する報告を皮切りに、欧米諸国では糞便微生物移植(腸内フローラ移植)の研究が進んできました。

腸内フローラ移植が最初に注目を浴びたのは、2013年のオランダの研究で、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)に対する目覚ましい治療効果がきっかけでした。CDIとは、外科手術等で抗生物質を大量に使用することにより、抗生物質に耐性を持ったクロストリジウム・ディフィシル菌のみが異常繁殖してしまい、結果的に本来は何千種類もいるはずの腸内細菌叢の多様性が失われ、最悪の場合は命に関わるとされる疾患です。アメリカでは毎年50万人以上がこの疾患に罹患し、毎年3万人が命を落としています。

その後2014年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が「CDIの多剤耐性時に、腸内フローラ移植が第一に選択すべき治療法である」と位置づけ、医学的にもその有効性が証明されつつあります。また、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患における治験でも良好な成果が出ており、他の疾患の治療法としても研究が進んでいます。抗生物質の誕生により細菌を死滅させることを良し、としてきた20世紀的医療とは対象的に、細菌を健康に役立てることを目指す医療が誕生しつつあると言えるでしょう。

また、アメリカ最大の便バンク「OpenBiome」では、対象疾患をCDIに限り、国内の医療機関に安全なドナー便を提供しており、当該ウェブサイトによると、これまで43,000件以上に及ぶ便の提供を行っています。

また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患に対する効果も上げています。

日本での取り組み

日本で「腸内フローラ」に多くの関心が集まるようになったのは、2015年2月に放映されたNHKスペシャル「腸内フローラ解明! 驚異の細菌パワー」がきっかけです。

それからは、単にお通じを良くするなどの消化に関する働き以上のパワーを腸内細菌が持っているのではないかという認識が一般の方にも広がりました。

日本における糞便微生物移植の研究は、2013年に各地の大学病院など8施設において、潰瘍性大腸炎とクローン病に特化した臨床治験が始まりました。(2016年に第一相終了)

海外と比較すると遅れていると言わざるを得ないのが現状ですが、日本でもより多くの方に腸内フローラ移植の可能性を知っていただくため、本研究会では幅広い疾病において臨床応用を進めています。

腸内フローラ移植における法整備

日本国内において、腸内フローラ移植に関する法整備はほとんど手付かずと言っても良い段階です。厚生労働省の公式な見解によると、2018年4月1日に施行された臨床研究法にも現時点では腸内フローラ移植は該当しません。

しかしながら、欧米ではすでに政府による腸内フローラ移植に関する指針が発表されるなど、日本での法整備も今後進んでいくことが予測されます。当ドナーバンクでは、近い将来腸内フローラ移植が臨床研究法の対象になることを視野に入れながら、海外の指針を参考に運営を行っています。

[参考]

FMT Protocol
FMT国内指針運営委員会(アメリカ国立衛生研究所、アメリカ消化器病学会)

European consensus conference on faecal microbiota transplantation in clinical practice | Gut
欧州10カ国以上、28人の有識者会議で合意を得たFMTの臨床応用指針


・腸内フローラ移植とは
一般的な方法との違い
症例紹介