自閉スペクトラム症 9歳男児 -糞便微生物叢移植症例紹介
症例紹介 9歳男児 自閉スペクトラム症
要約
自閉スペクトラム症(ASD)に対して糞便微生物叢移植を施行した例。3歳時に自閉スペクトラム症の診断。こだわりの強さ、感情コントロールの困難さが目立っていた。5回目移植施行時頃より、機嫌の良い日が徐々に増え、それまでできなかった我慢ができるような場面が増えてきた。感情的になる場面が減った。癇癪も減った。
基本情報
| 患者様: | 9歳男児 |
| 主治医: | 城谷バイオウェルネスクリニック内科・矯正歯科 神戸三宮 (旧:ルークス芦屋クリニック) |
| 移植担当医療機関: | 城谷バイオウェルネスクリニック内科・矯正歯科 神戸三宮 (旧:ルークス芦屋クリニック) |
初診時情報
| 病名: | 自閉スペクトラム症 |
| 発症時期: | 3歳時に自閉スペクトラム症と診断 |
| 移植目的: | 疾患の改善 |
| 主訴: | ・思い通りにならなかったときや人から指摘を受けたとき、失敗したときに感情が高まって涙が出たり、癇癪を起したりする。 ・コミュニケーションの苦手さもあり、カッとなりやすくお友だちともトラブルを起こしやすい。 |
| 既往歴: | 咳喘息、アレルギー(ハウスダスト) |
| 経緯、家族歴、生活習慣、サプリメントの利用状況など: | なし |
移植情報
| 移植期間: | 2023/8/31〜2023/10/12 |
| 移植回数: | 移植6回 |
| 移植初回〜移植終了までの変化: |
| 【初回問診時】 ・不登校。友達に馬鹿にされる。 ・フリースクールへ週2〜3回通っている。放課後デイサービスにも行っている。 ・こだわりが強く、感情コントロールが難しい ・動画視聴やゲームが好き。外国に行きたいので、英語でゲームの実況を聞いている。 ・文字を書くのが苦手。不器用。 ・食欲はある。嫌いなものはない。 ・睡眠に問題なし。 ・問いかけに対しての返答はスムーズ。 【1回目移植時】 ・「うんち、ぷっちゅんする」と言い聞かせ母親と来院。本人はケロっとしていた。自宅にて移植のシミュレーションを行なってきたため、移植はスムーズに実施できた。体位交換時には笑顔もあり。移植に対しての受け入れはできている。 ・肘、膝裏に湿疹あり。時折、目を掻いていた。 【2回目移植時】 ・寝る前と朝方にアレルギーによる目の痒みや、関節部の痒みが出る。服薬中止のため、アロマで様子をみている。 ・前回、菌液の付着が少しあった。本日は排便なし。 ・前歯(上)乳歯と永久歯があるため歯科受診したい。抜歯する可能性がある。 →局所麻酔は問題ないが、抗生物質は出されないように依頼した。 ・表情は明るい。母親と一緒に遊びながら待機できていた。 ・腹鳴良好。直腸内便の貯留あり。移植スムーズに終了できた。 【3回目移植時】 ・特に変化なし。 ・本日排便なし。前日にType5の排便あり。排便は3日に1回だったが、2〜3日に1回は出るようになった。 ・鼻詰まりと、目の痒みがあり朝早くに目覚める。 ・先週は旅行にいって楽しかった。 ・曇りになると頭痛がある。 ・表情穏やか。移植スムーズ。欠伸をしており、移植に対する緊張感はなし。 【4回目移植時】 ・特に変化なし。移植に対する変化は感じていない様子。 ・3日に1回だった排便が2日に1回になった。 【5回目移植時】 ・母親より「機嫌がいい時が増え、我慢が効くようになった。」とのこと。 ・移植を待っている時も、携帯を触らずに待てていた。機嫌が良い。 ・腹鳴良好。問題なく移植終了した。 【6回目移植時】 ・移植5回目の約1週間後から食欲低下。 最高体温39℃の発熱が3〜4日続いた。痰絡みの咳が残る。 ・フリースクール先生から「踏ん張りが効くようになった。心の成長ですね」と言われた。 ・感情的になる場面が減った。 ・前回移植後から体調変化もあってか、排便が2日に1回になり、形状も緩くなった。 ・機嫌は良い。移植後、少し菌液の漏れあり。 |
| 移植終了後の変化: |
| ・これまでは否定的な言葉に過剰に反応し、イライラすることが多かったが、穏やかな反応が増えた。癇癪も減り、我慢ができるようになった。 ・疲れやすいのは変わらない。 ・携帯触りながら、穏やかに過ごしていた。診察前に携帯を取り上げられ、少し怒っていた様子あり。 【18週時点】 ・排便頻度が減ってしまった。毎日はない。 ・移植直後は2日に1回排便があったが、3〜4日に1回になった。便の水分量が減っている様子。 ・食事は大きく変わっていない。玄米、野菜・魚摂取を意識している。お菓子が多い。 ・癇癪の頻度は減ったが、激しさは変わらない。 ・体調が優れず、頭が痛い様子だった。 ・特性に関しては不安もまだ強い。 【30週時点】 ・大きな変化はない。機嫌よく過ごせている。移植直後は変化を感じたが、その後は大きく変わっていない。 ・排便は3日に1回、Type4の排便。下痢(Type6−7)のことも時々あるが基本的には普通便。 ・食の好みは変わらなかった。野菜も魚も食べている。甘いものはやめられず、おやつも多い。 ・癇癪は減っており頻度は多くない。フリースクールの先生からも「我慢出来るようになった」と言われた。 ・便通のことや感情のコントロールに関して懸念あり。待つことが苦手。 ・笑顔で機嫌よく過ごしている。 |
腸内フローラバランス 比較データ

評価・考察
| 移植総評・考察: |
| 移植直後より感情的になる場面が減った。その後大きな変化は見られないが、症状の改善は維持できている。機嫌良く過ごせている。癇癪も減った。 移植の効果を認めた症例。 |
以上