自閉スペクトラム症7歳男児 -糞便微生物叢移植症例紹介
症例紹介 7歳男児 自閉スペクトラム症
要約
移植後、気持ちが落ち着いている時間が長くなる、癇癪を起さない日がみられるようになった。今までに見られないスプーンを使う行動がみられるようになり、「連絡帳」等のしゃべったことのない難しい単語が発っせられた。
基本情報
| 患者様: | 7歳男児 |
| 主治医: | 医療法人喜和会 喜多村クリニック |
| 移植担当医療機関 | 医療法人喜和会 喜多村クリニック |
初診時情報
| 病名: | 自閉スペクトラム症 |
| 発症時: | 平成26年8月 |
| 移植目的: | 疾患の改善 |
| 主訴: | 自閉症スペクトラム障害により、発語はほとんどなかった。現在少し単語を話すようになってきたものの、会話としてほとんど成り立たない。また常同行動が多くみられ、ちょっとしたことで機嫌が悪くなり癇癪をおこすことも多い。行動も長続きせずとても不器用である。小さいころから目をあわすこと、指さし、発語がなく、大泣きすることが多かった。普通のおもちゃで遊ぶことはほとんどなく、しゃもじをくるくるしたり、携帯電話をずっと回したり、ドアのロックを開け閉めしたり、同じ行動をくりかえしていた。小児科で数回みてもらっているが、特に薬や治療は受けていない。 |
| 既往歴: | なし |
| 経緯、家族歴、生活習慣、サプリメントの利用状況など: | 薬、サプリの利用なし |
移植情報
| 移植期間: | 2020/4/11~2020/10/3 |
| 移植回数: | 移植6回+追加3回 計9回 |
| 移植初回〜移植終了までの変化: |
| 【1回目移植時問診】 お母様付き添いのもとご来院。問診の為、看護師が近くに行くと立ち上がって「あ~あ~」と声を出す。血圧は今まで測定したことがなく少し興奮している様子の為、測定せず。笑顔あり、機嫌はいつもと変わりない。朝は熱などなし。 菌液注入は問題なく終了。漏れなし。注入中は「あ~あ~」と声を出され体動あるがしっかり体動抑制できていた。待合室に戻られ来院時と変わりなく落ち着いていらっしゃる様子。 【2回目移植時問診】 移植時は声をあげながらやや抵抗あるが、10㎝挿入し、1分弱で終了。肛門からの菌液の漏れはなかった。施行中、ずっと泣き続けることはなかった。終了後は、オムツを着けることはされずパンツをはかれる。前回の移植はオムツをはいたがほとんど漏れはなかった、とのこと。帰られる際に、母親に促され「さようなら」と言葉あり。 (お父様より)全体的に気持ちは落ち着いていた。癇癪を起こすことが少なかった。言葉は、食べ物しか話せなかったのが、それ以外の物について喋ったり、サラダを手づかみしていたのが、スプーンを使ったりするようになり、概ね良い感じ。学校でも落ち着いている。便はずっと硬い感じだった。 【3回目移植時問診】 腸内フローラ移植3回目は、10㎝挿入で漏れはなし。1分半程で終了した。挿入時、力が入って管が入らず時間がかかった。 【4回目移植時問診】 腸内フローラ移植4回目実施。カテーテル挿入時に抵抗があり、少し手間取るが、10cm挿入し1分ほどで終了した。液漏れなし。 (お父様より)言葉(単語)が少しずつ増えてきている。また気持ちの面でも前に比べて落ち着きが出てきたように思う。 【5回目移植時問診】 移植終了後はオムツを履かせたが、脱ぎたがって脱いだ。オムツに少量うんちがついていたが、他に体調が悪い等はない。10cm挿入で菌液の漏れもなかった。 (お父様より)会話的には成り立っていないものの、話す頻度と単語は少しずつ増えてきているように感じる。言葉については、やはり通常の受け答えは難しく、同じ言葉を連呼する状態が続いている。こちらが言う指示については理解が出来ているように感じた。寝る前、妻が名前を呼んで話しかけると、そのたびに「はい」と返事をする。名前を呼ばれる度にきちんと返事をする事は、あまりない事だと感じた。 【6回目移植時問診】 10㎝挿入で菌液の漏れはなし。1分程で終了。 (お父様より)好きな物に対して衝動が抑えられない、行動や言葉における常同行動には変化はないが、気持ちが落ち着いている時間の方が多いようだ。後日、連絡帳を棚から取って欲しかったようで「連絡帳」としゃべった。こんな難しい単語は教えた事はないし、しゃべった事のない単語が発せられた。 【移植6回終了後の検査説明時問診】 移植終了後から今日までの間、ご本人の症状に結構変化があった。疳積をおこすことが大分少なくなった。激しい疳積は起こさなくなったが、自己の主張は相変わらず強い。不機嫌になることがあるが、自分でコントロールできるようになってきた。しつこく同じ事を繰り返し言う行為は変わらないが、言葉、単語がだいぶ増えてきた。 【追加1回目移植時問診】 約10cm挿入し、1分半で終了。菌液の漏れなし。 【追加2回目移植時問診】 約10cm挿入し、1分半で終了。菌液の漏れなし。 (お父様より)朝、勉強をするとき等、自分の気に入らない事があると「ウーウー」とうなる。その都度言わないように諭すが、なかなか治らない。 【追加3回目移植時問診】 約2分で終了、菌液の漏れなし。 (お父様より)なんとなくであるが、声のしゃべり方がしっかりしてきた様な気がする。 【追加移植3回終了後の検査説明時問診】 移植前に比べて、怒ったり癇癪を起したりする頻度は下がり、今回の3回の追加移植後は癇癪を起すことがずっと減った。気持ちの落ち着きがみられた。ただ、こだわりはまだあり、減ってない。 |
腸内フローラバランス 比較データ

| 本人の体感(アンケートより):移植を経て、お悩みのご症状がどのように変化しましたか? |
| 【移植前】 感情の起伏が激しく、常同行動が多く、言葉の発語が食べ物についてすこしある程度であった。 【移植中】 言葉について、少しずつ発語が増えてきた。感情の起伏も少しずつ収まってきている。 【移植後】 言葉については、明らかに発語が増えた。感情の起伏も少なくなってきた。常同行動については、今のところおさまってはいないが、促すとやめることはできるようになってきている。現在、移植後、3週間ぐらいであり、今まで発することができなかった単語はどんどん出てきているが、いまだに2語文であり、会話がスムーズにできるほどの成長ではない。今後に期待を寄せている。 |
評価・考察
| 移植評価: | 症状の軽度改善 |
| 有害事象の有無: | なし |
| 移植評価: |
| 移植後、気持ちが落ち着いている時間が長くなる、癇癪を起さない日がみられるようになった。今までに見られない、スプーンを使う行動がみられるようになった。連絡帳などのしゃべったことのない難しい単語が発っせられた。今後も経過を見ていく必要あり。 |
以上
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