学術大会

第4回学術大会【開催報告】

2020年9月21(月祝)に開催された「第4回学術大会」は、新型コロナウイルス感染症の予防及び拡大防止の観点から、会場の規模を縮小し、オンサイトとオンラインで開催されました。
感染予防対策の取り組みにご協力いただきながらの開催となりましたが、医療関係者や一般企業の方、研究機関の方、患者様にもご参加いただき、とても有意義な1日となりました。

オープニング

開催の辞

始めに、代表理事 田中 善 先生からご挨拶がありました。
田中 善 先生は、医療法人仁善会 田中クリニック 理事長 として、がんの先進医療を中心に、分子栄養学、免疫学、歯科口腔内環境などを駆使した統合医療を推進し、予防医学の発展に寄与することを心がけた医療を実践されています。

腸内フローラ移植、腸内細菌について、分かりやすく説明していただきました。動画はこちらからご覧ください。

開催挨拶 代表理事 田中 善 先生

第一部

[基礎研究]

►シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真

基礎研究①
●腸内細菌たちとの付き合い方と泡の話
発表:シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真
我々の体は食べ物と水でできています。腸内細菌たちもそれは同じです。人体という小宇宙、その巨大な宇宙空間で600万年ほど前から共生している様々な1,000兆匹もの微生物たち。彼らが我々に影響を与えていないはずはありません。病気もその一つです。
そんな彼らと我々人類が能動的に関与できていない共通の物質「水」と「空気」、そしてそれを使ってできる「泡」。
今回は、水に満ちた小宇宙で「泡」をコントロールすることにより、更に良い共生関係に導くことができると信じた我々「腸内フローラ移植臨床研究会」の可能性をお話させていただきました。
★清水真のメッセージ全文はこちらからご覧いただけます

38年前、細菌検査室で来る日も来る日も便と向き合った臨床検査技師としての日々、顕微鏡で見る菌たちはまるで意識があるように、またある時には怯えているかのようにブルブルと震えている様々な形をしています。「水」と「空気」だけを使ってできた「泡」と、菌たちとの可能性についてじっくりお話していただきました。

►一般社団法人生物活性研究機構 代表理事 団 克昭 先生

基礎研究②
●菌の認識における高機能ウルトラファインバブル水と生理食塩水との差別化
発表:一般社団法人生物活性研究機構 代表理事 団 克昭 先生
昨年の第3回学術大会において、糖尿病モデルマウスに対するFMTを実施し、UFB水で調製した菌液を腸注したマウスの高血糖値が低下することを共同研究として報告しています。
その際、菌の調製液としてなぜ生理食塩水ではなく、UFB水で有効であったのか?この疑問を解決するべく、両者で調製した菌液の安定性やマウス腸管腔における菌の生着度合いを検証するため、差別化を試みてきました。様々な検証を行い、生理食塩水との差別化が確認されました。さらに上皮細胞によるグルコースの取り込みにおいてUFB水調整菌液で取り込み量の減少または遅延と思われる結果を得ています。
前回の糖尿病マウスの血糖低下、そして糖代謝改善の理由の一助になるのではないかと考えています。今回は菌製剤の添加によるレスポンスですが、これを実際のヒトFMTに適応した際の反応性やUFB水による差別化が保持されるかは、今後検討すべき課題です。

「腸内フローラは変えられない」それが世界の常識でしたが、今回、新たな視点からウルトラファインバブル水と生理食塩水の違いを検証いただきました。団博士との共同研究のお陰で基礎研究が大きく進んだ一年でありました。

[症例紹介]

►専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック)

一人目は、専務理事 城谷 昌彦 先生による過敏性腸症候群の症例について発表がありました。ルークス芦屋クリニック 城谷 昌彦先生は、 当研究会設立当初から理事として運営に関わり、 書籍の出版は講演活動など、腸内環境の重要性や、腸内フローラ移植の啓蒙に務めていらっしゃいます。 消化器症状の改善だけでなく、心理的な側面からも診療を行われています。

症例報告①
腸内フローラ移植が過敏性腸症候群患者の精神症状に及ぼす効果についての検討
発表: 専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長 )
ルークス芦屋クリニック 城谷昌彦先生糞便微生物移植(FMT)は腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ(dysbiosis)を改善させる方法として近年注目されているが、当研究会では微細な泡に水素を置換させたウルトラファインバブル水を用いてFMTを行っています(UB-FMT)。ウルトラファインバブルの持つ様々な特性により、従来のFMTに比して効果が高いと考えられています。これまでに当研究会において過敏性腸症候群(IBS)の患者に対してUB-FMTを行い比較的高い確率で消化器症状の改善を認めており、この度UB-FMTが「怒り」や「不安」などの気分に、どの様な変化を及ぼすかを調査しました。心理面からアプローチした症例報告でした。

城谷昌彦 先生の発表内容(動画)はこちらからご覧いただけます。


►理事 川井 勇一 先生(医療法人悠亜会 理事長 かわい内科クリニック)

2人目は、 今回の総会で理事に就任された 川井 勇一 先生です。 西洋医学のみならず東洋医学、分子整合栄養医学などの中から 適切なものを選択し、「病気予防」を第一に『こころもからだも喜ぶ医療』の実践を心がけていらっしゃいます。
過敏性腸症候群の患者様が腸内フローラ移植を受け、さらに生活習慣も見直されて長い間寛解状態を維持されている患者さんの、長期経過を報告されました。

症例報告②
UB-FMTにより改善を認めた過敏性腸症候群症例の移植後経過報告
発表: 関西ブロック長 川井勇一 先生(医療法人悠亜会 理事長 かわい内科クリニック 院長 )

かわい内科クリニック 川井勇一先生

研究会の腸内フローラ移植によって、過敏性腸症候群患者の腸内細菌叢の乱れが改善し、 下痢症状の明らかな改善をみた症例の約2年にわたる経過について報告します。 当研究会所属の医療機関での過敏性腸症候群に対する2018年1月から2020年8月における腸内 フローラ移植の施行実績は、現在治療中を含めて24例で、評価可能例での便性状は、有意な改善を認めました。過敏性腸症候群では、ストレスと消化器症状悪化の相関係数が健常者より高く、特に現代のストレス度は増大傾向であるので、今後さらなる対応が求められると思われます。 その選択肢の一つとして腸内フローラ移植を考慮する価値は、十分にあると考えています。

川井 勇一 先生の動画はこちらからご覧いただけます。


►理事 喜多村 邦弘 先生(医療法人喜和会 理事長 喜多村クリニック)

3人目の症例は、理事 喜多村 邦弘 先生からの発表でした。喜多村先生は、昨年に引き続き、自閉症の患者様の経過を報告してくださいました。
20年以上もがん治療に取り組み、いわゆる標準治療の限界を感じていらっしゃいました。そのなかで統合医療・腸内フローラ移植に出会い、自閉症の患者さんの治療経験を通じて腸内フローラ移植の新たな可能性を感じていらっしゃいます。

症例報告③
腸内フローラ移植を行った自閉症の治療経験
発表: 理事 喜多村邦弘 先生(医療法人喜和会 理事長 喜多村クリニック 院長 )

喜多村クリニック 喜多村邦弘先生

自閉症は神経発達障害のひとつで、現在は⾃閉症スペクトラムと呼ばれます。主な症状とし て 、社会的⾏動や対⼈コミュニケーションに⽀障を来すことや、繰り返し⾏動や特定のも のごとに強いこだわりを示すことがあげられます。

今回は昨年に続き、腸内フローラ移植を重ねるにしたがって、社会的⾏動、精神症状や消化器症状 に変化がみられた、⾃閉症スペクトラムの治療経験を報告します。

[パネルディスカッション]

●腸内フローラ移植の可能性
座長 代表理事 田中 善 先生(医療法人仁善会 理事会 田中クリニック 院長)

一般社団法人生物活性研究機構 代表理事 団 克昭 先生
専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)
理事 川井勇一 先生(かわい内科クリニック 院長)
理事 喜多村邦弘 先生(喜多村クリニック 院長)
シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真

第一部で発表してくださった先生方によるパネルディスカッションが行われました。
今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため質問はフォームで受付させていただきました。「腸内フローラ移植の可能性」をテーマに、沢山の質問をいただき、皆さんの関心度の高さがうかがえました。

[ランチタイム]

協賛企業のブース紹介

今回ご協賛いただきました企業様のご紹介がありました。

協賛にご協力くださいました皆様、本当にありがとうございました。

第二部

第二部では、目に見えないほど小さな気泡のウルトラファインバブル(UFB) の可能性についての研究発表が行われ、基礎研究の積み上がりを感じられる演題となっているかと思います。このUFBの製造と、それを応用した製品の開発は、シンバイオシスのコア技術です。

[研究・開発]

►ベックマン・コールター株式会社 ライフサイエンス事業部 二階堂 正聡 氏・米田智宏 氏

シンバイオシスのウルトラファインバブル(UFB)は、目に見えないほど小さな気泡であるため、今までに計測することができずにいました。しかし、ベックマン・コールター社との素晴らしい出会いに恵まれ、ついに泡の計測が実現したのです。
UFBを測定する際の苦労秘話、他のウルトラファインバブル(UFB)との違いを、ベックマン・コールター株式会社の米田智宏氏が解説してくださいました。

検証報告
●ウルトラファインバブルの大きさと数の測定検証について
発表:ベックマン・コールター株式会社 ライフサイエンス事業部 二階堂 正聡 氏・米田智宏 氏
UFB技術は、すでに様々な特性や効果が明らかになりつつあり、多くの産業分野で応用が期待されています。しかし残念ながら、まだ一部の産業分野でしか実用化されていないのが現状です。そのもっとも大きな理由の一つに「バブルを液体中に安定させられず、消滅してしまう」という技術的な課題がありました。技術は日々進化し、ベックマン・コールター社との素晴らしい出会いに恵まれ、ついに泡の計測が実現。「こんな数値は正直見たことがないです」担当者をうならせたウルトラファインバブルの計測秘話についてお話ししていただきました。

ベックマン・コールター株式会社 米田智宏 氏の発表動画はこちらからご覧ください。

シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真

研究・開発①
●10年経っても消えないバブル、高機能ウルトラファインバブル水の可能性
発表:シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真
学生の頃、私がウルトラファインバブル(旧ナノバブル)に想いを馳せた理由は、人体が泡を気体として認識できないサイズだからです。もちろん細菌たちにもできません。
その泡の性質を物理化学的にみてみると、我々の想像を絶する世界が見えてきます。
我々が超微細な気泡を溶液中で安定的にかつ正確にコントロールできるようになれば…。
人体という小宇宙の住人である共生生物たちと対話する方法から多くのことを学び、人体内での超微細な局所における熱エネルギー利用の可能性を学びました。
最先端の泡の物性と可能性のお話をさせていただきました。
★清水真のメッセージ全文はこちらからご覧いただけます

シンバイオシス研究所 森下理咲子

研究・開発①
●DDS分野へのUFB水の活用に寄せる期待
発表:シンバイオシス研究所 森下理咲子
水と気体のみを原料とするUFB水は、安全性が高く、環境にも優しい今までにない新たな素材です。
UFBがマイナスに帯電していることや置換空気を様々に換えることができることから、すでに洗浄・植物栽培や漁業の分野で活用実績がありますが、近年の研究論文を読み解いていくと、実は創薬や創剤分野でも多いに活用できる可能性が見えてきました。
高機能ウルトラファインバブルの利点を交え、その無限大の可能性に関して、皆様にご紹介させていただきました。

►神戸学院大学薬学部  薬物送達システム学研究室 講師 民輪英之 先生

研究・開発②
●バイオ医薬のDDS(薬物送達システム)を高機能化するウルトラファインバブル水の可能性
発表:神戸学院大学薬学部  薬物送達システム学研究室 講師 民輪英之 先生
近年、UFB水を活用することで腸内細菌叢移植による治療効果が劇的に向上する事例が報告されています。UFB水は、化学物質が含まれないこと、ヒトへの使用実績があることから高い安全性が示唆されており、バイオ薬物の生体膜透過性を改善するDDSに応用できれば、生体適合性の高い有用な素材となることが期待できます。
本研究では、上記の可能性を評価するため、まず始めにバイオ薬物の消化管吸収に及ぼすUFBの影響をin vivo実験にて検証し、さらに、UFB水のラットの回腸粘膜の適応時における安全性評価を実施しました。本講演では、その得られた結果について詳細に報告しました。

[パネルディスカッション]

高機能ウルトラファインバブル水の有用性
座長 神戸学院大学薬学部 教授 武田真莉子先生

ベックマン・コールター株式会社 米田智宏 氏
神戸学院大学薬学部 民輪英之 先生
シンバイオシス研究所 上席研究員 清水 真
シンバイオシス研究所 森下理咲子

午後のパネルディスカッションは、第二部で発表してくださった先生方が登場して、高機能ウルトラファインバブル水の有用性についてのディスカッションが行われました。

[総括]

一年間の研究・開発を振り返って、今後の展望
技術監事 塚本悟郎 先生

閉会のご挨拶

専務理事 城谷昌彦 先生(ルークス芦屋クリニック 院長)

第5回 学術大会につきまして

第5回学術大会の開催が下記の通り決まりました。第5回も腸内フローラ移植の基礎研究報告・症例報告など、皆様方に日頃の研究の成果をご報告いたしますので、皆様のご来場をお待ちしております。
詳細が決まりましたら随時、第5回学術大会イベントページでご案内をさせていただきます。

[日程] 2021年9月19日(日)
[場所] リーガロイヤルホテル大阪

最後に

このようなコロナ禍で無事に開催できましたのは、 これもひとえに、皆様の軒並みならぬご支援のお蔭と感謝しております。 腸内フローラ移植の可能性が、今まさに注目されているのだということを、改めて実感し、今後の研究においても身を引しめて臨んでまいりたいと思います。引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。

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