過敏性腸症候群 50代女性 -糞便微生物叢移植症例紹介
症例紹介 50代女性 過敏性腸症候群
要約
基礎疾患として筋ジストロフィーあり。30代から過敏性腸症候群の症状出現、またSIBOの診断もされている。小麦は下痢が悪化するので避けている。左記症状で移植開始。1回目移植終了後から下痢、排便回数の改善を認めた。症状軽快した為、過敏性腸症候群治療薬等を減量したが、軟便が悪化した為、それ以前の用量に戻した。その後、排便回数1回/1日程度、軟便の時もあるが、移植の回数重ねる毎に改善した。腹痛なく食欲も出て来て、便意切迫感やその他耳鳴りも軽快し、足の浮腫等の改善も認めた。
基本情報
患者様: | 50代女性 |
主治医: | 医療法人桂名会 木村病院 ルークス芦屋クリニック |
移植担当医療機関 | 医療法人桂名会 木村病院 |
初診時情報
病名: | 過敏性腸症候群 |
発症時: | |
移植目的: | 疾患の改善、下痢 |
主訴: | 朝仕事前に腹痛と下痢をするようになったため、近医の処方薬等でしのいでいた。消化器外科に通院し、処方された薬で下痢は止まっていたが、不安感が強くなったため、精神科処方の抗うつ薬を飲んだ。他疾患により電動車いすを使用するようになった途端、体がむくみ、食後の吐き気やめまい、膀胱炎、尿路結石など色々な症状が現れた。通院先と処方薬を変えてむくみは引いたが、薬を飲んでいても下痢はしばしばあった。食事療法を開始し下痢の頻度は減ったが、腹部膨満感、朝と食後の不快感は継続した。今年の1月末から過敏性腸症候群治療薬等服用することで1〜2回普通便が出るようになった。朝や食後の胃腸の不快感は継続している。 |
既往歴: | なし |
経緯、家族歴、生活習慣、サプリメントの利用状況など: | ビタミン剤、消化器酵素等 |
移植情報
移植期間: | 2021/10/27~2022/11/30 |
移植回数: | 移植6回 |
移植初回〜移植終了までの変化: |
排便回数1回/1日程度、軟便の時もあるが、移植の回数重ねる毎に改善した。腹痛なく食欲も出て来て、便意切迫感、その他耳鳴りも軽快し、足の浮腫の改善も認めた。 【1回目移植時問診】 朝はバナナ状の便、その後泥状便あり。腹部違和感持続。 【2回目移植時問診】 便の回数が減ってきた(2回程度)。過敏性腸症候群治療薬も減量できている。 【3回目移植時問診】 食欲が出て来た。軟便は減ってはきているが、時々あり。 【4回目移植時問診】 胃腸機能調整薬を減量したら、軟便から下痢あり。軟便で便の回数は5回/日程度、腹痛はない。食欲あり。 【5回目移植時問診】 排便回数1日1回、軟便もなし、腹痛なし。 【6回目移植時問診】 腹痛、軟便なし。便意切迫感は移植5回目終了してから軽快傾向。下肢筋力低下に関しては変わらず、耳鳴りが軽快している。左足の浮腫が軽快。 【6回目移植後1回目問診】 毎朝起床後に排便あり。膨満感は普段ないが、ごぼうを少し食べたことで調子をすこし崩した。筋ジス進行はなし。筋肉量の減少もなし。移植後食欲は増えている。 【6回目移植後2回目問診】 今月に入ってから調子がいい便通安定。ごぼう、納豆も食べられるようになっている。小麦も少量なら問題ない。腹部膨満はないが、3食摂ると調子悪くなることがある。 【6回目移植後3回目問診】 なんでも食べれるようになっている。野菜根菜類も食べれており、移植してよかった。寝起きが良く、嫌なことが残らなくなる等気分が良くなった。抑うつっぽくなるのを避けられるようになった。 |
腸内フローラバランス 比較データ
評価・考察
移植評価: | 症状の明らかな改善 |
有害事象の有無: | なし |
移植評価: |
排便回数1回/1日程度、軟便の時もあるが、移植の回数重ねる毎に改善した。腹痛なく、食欲も出て来て、便意切迫感も改善した。その他耳鳴りも軽快し、足の浮腫の改善も認めた。移植後6ヶ月後のフローラ検査ではターゲットバランスからはまた離れているものの、自覚症状(腹部症状)は改善傾向あり。それまで食べられなかったものが難なく食べられるようになった。 |
以上
その他の 腸内フローラ移植・症例紹介 に関する記事
Articles about other 腸内フローラ移植・症例紹介
2024年04月23日
その他の疾病 50代男性 -糞便微生物叢移植症例紹介
症例紹介 50代男性 その他の疾病 要約 50代男性。以前から気分にムラがあり、躁状態とうつ状態を繰り返すことが続き、また些細なことにイライラしたりすることも多い状況であった。便通は特に問題なく、生活習慣病の既往もないが […]
2024年04月08日
糞便微生物叢移植実績〈2024年4月1日時点〉
当研究会における症例別の糞便微生物叢移植実績件数は下記の通りです。
2024年04月08日
潰瘍性大腸炎 50代女性 -糞便微生物叢移植症例紹介
症例紹介 50代女性 潰瘍性大腸炎 要約 潰瘍性大腸炎(UC)に対するFMT。 FMT開始後に虫垂炎を発症し、抗生剤内服で軽快。その後一時的に増悪(下血)あるも徐々に改善傾向あり、UCに対して効果があったものと考える。 […]